本間技術士事務所の本間精一氏
本間技術士事務所の本間精一氏
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 日本メーカーのプラスチック製品でトラブルが増加している。強度不足で割れた、クラックが入った、プラスチック製部品を製品に組み付けられない…。深刻なトラブルが、設計や生産の現場で繰り返し起きているのだ。

 実は、プラスチック製品の設計や成形は難しい。材料の特性を押さえ、適切な設計を行って、成形条件を整えるという総合的な技術が必要だからだ。にもかかわらず、知見を備えた多くのベテランが日本メーカーの現場から去っている。また、低コストを求めて海外の成形メーカーを頼るも、海外企業にはトラブル対応に関するノウハウが乏しいケースが少なくない。

 「技術者塾」において(1)「プラスチックの強度特性を活かす強度設計&トラブル防止策」、(2)「実践!プラスチックの実用特性と失敗しない設計・成形方法」、(3)「プラスチック製品のトラブルQ&A 71問」の講座を持つ、本間技術士事務所の本間 精一氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)


──プラスチックに関する技術セミナーが人気です。日本メーカーに今、何が起きているのでしょうか。

本間氏:プラスチック製品を正しく扱うことに対応し切れていない日本メーカーが増えているのでしょう。実は、プラスチックのものづくりは、専門が多岐にわたります。材料の種類や物性の知識はもちろん、成形加工の技術も必要です。そして、設計するとなると、材料力学だけでなく、強度の観点から破壊力学の知識も習得する必要があります。これらの技術を総合的に判断してプラスチック製品を造っていかなければならないのですが、全体を見渡せる人や書籍が減り、プラスチック製品を正しく造るための情報が少なくなってきているのです。


──しかし、プラスチックそのものの物性や特性を示した本はあります。材料力学も破壊力学も教科書的なものがあると思います。

本間氏:そうした関連する専門技術を総合的にまとめた本がないのです。つまり、プラスチックを使って何かを設計したいときに、例えば強度トラブルを防ぐために必要な情報がまとまって書かれた本がなかった。大学の先生などが執筆した本はあるのですが、アカデミックな領域なので、実際に現場でものづくりをするとなるとなかなか使いこなせません。実はこうした背景から、私は書籍「【決定版】 プラスチック製品の設計・成形ノウハウ大全─必須の特性を押さえる、120のQ&Aでトラブルを防ぐ─」を著しました。

 以前は、日本メーカーの社内に、こうした総合的な技術やノウハウを習得し、若手技術者に伝えていくベテランがいました。そうした人材も今、少なくなってきています。