投資家視点の分社化では競争力は高まらない


 では、「各事業ユニットの自立」は、どうだろう。
 中期経営方針発表の場で、すでに分社化したテレビやモバイル、ゲームなどに加えて、ウォークマンを手掛けるビデオ&サウンドなど、エレクトロニクスの各事業ユニットを分社化する予定であることが語られた。分社化の狙いの定番である「事業ユニットの経営の自立を高めて、競争力を高めること。結果責任を明確化すること」が狙いとのことだ。

 しかし、分社化するということは、分社化された事業ユニットに対して、本社が投資家となることである。ならば、投資家視点を重視した経営をすると言っている以上、ソニーは分社化された事業ユニット、すなわち子会社に対して、本社である親会社の視点を重視した経営を求めることになる。結果、事業ユニットの経営の自立は高まるどころか下がるだろう。

 そして、分社化には事業ユニット間の連携低下という副作用があり、これは、ユニット間に重複する組織や業務の肥大化によるコスト増、技術的な相乗効果の希薄化による商品力の低下など、競争力を下げる要因を生みやすい。よって、自立が高まらなければ、事業ユニットの競争力は、高まるどころか下がりかねない。

 ただし、分社化すれば、事業ユニットは本社とは明確に別の事業体と言えるようになるわけだから、たとえ事業ユニットの経営の自立は高まらなくても、各事業ユニットの経営者の結果責任を明確化することにはなるだろう。