1打点1万円の基金

 「2006年2月7日、長男が誕生しました。早産だったため、わずか712gしかありませんでした。そのためすぐに新生児集中治療室(NICU)に入院することになりました。

 小さく生まれた長男には、さまざまな困難が待ちかまえていました。生死をさまよい、生きることをあきらめなくてはいけないのではないかという状況に陥るたびに、NICUで働く先生方や看護師さんが、休みも十分に取れないような状況の中、一生懸命我が子を救おうとしてくれました。そんな姿を見て励まされ、先生方や看護師さんのためにも、がんばって子どもを育てていきたいと思うようになりました。

 息子がNICUに入って初めてNICUの存在を知り、長男が闘病を続けるうちに、現在NICUが置かれているさまざまな問題を知りました。

 厳しい条件の中で、小さないのちを救おうと日夜、身を粉にして働いているNICUの先生方や看護師さんをはじめ、新生児医療、小児医療に携わっている方々、また、息子と同じようにNICUにお世話になっている、あるいはお世話になった子どもたち、そのご家族の方たちを、何とか応援していきたい。早産児の息子をもち、息子の小さないのちを救ってもらったひとりの父親として、そう思いました」

新生児医療支援グッズのリストバンド。オレンジ色は「こどもたちの未来へのともしび」を意味している。

 そう思った父親は、自分が野球選手だったので、公式戦で1打点あげるたびに1万円を積み立て、新生児医療を支援する「ささえるん打基金」を設立する。

 選手の名は、村田修一。1980年、福岡県に出生。2002年に横浜ベイスターズに入団。内野手、主砲として活躍し、2007年、2008年に2年連続セントラル・リーグ本塁打王を獲得。2011年12月、読売ジャイアンツへの移籍を発表し、強力打線を担う。