マイクロ波化学 代表取締役社長・CEO 吉野巖氏

 大阪大学発ベンチャー企業のマイクロ波化学(大阪府吹田市)は、2007年8月に創業した、創業約8年の新進気鋭の企業だ。その同社は、2014年10月にドイツの化学大手であるBASFと共同開発契約を締結したと発表し、脚光を浴びた。この共同開発の内容は、樹脂などの原料となるポリマーを製造する工程のエネルギー高効率化を図るというものだった。

 マイクロ波化学は創業時から追究している“マイクロ波”を照射し、ポリマーを内部から活性化して、高効率な化学反応を実現することで、ポリマーの製造工程でのエネルギー効率を高めるという挑戦的な内容の共同研究を進めている。

 この共同開発では「マイクロ波化学技術を適用したパイロットスケールでの高効率化を実証する開発に取り組んでいる」という。同社は、パイロットスケールで連続型マイクロ波装置(年間処理量が1000t)を用いた試験運転を実施するという目標に挑戦中だ。

 当然、マイクロ波化学はBASFから相当額の共同研究費を受け取っていると推定できる。売上規模が小さいベンチャー企業にとって、研究開発費や事業資金を安定して確保できるという点で、一つのターニングポイントになったと考えられる。同時に、世界のBASFを相手に共同開発するだけの独創的な技術を持つ企業として、世界中に同社の研究開発力をアピールできた点に意味がある。

 マイクロ波化学は、2007年8月に創業者の一人である吉野巖氏(現・代表取締役社長・CEO(最高経営責任者))が当時、居住していた京都市の自宅の一室で創業した。当時、大阪大学大学院工学研究科の特任准教授だった塚原保徳氏(現・取締役・CSO(最高科学責任者))と知り合い、塚原氏が研究開発していたマイクロ波を利用する化学技術を基に「新しいテクノロジーを基盤にしたベンチャー企業を起こしたい、日本発の革新的技術を世界中に普及させたい」という事業構想を一緒に練り上げ、その思いを実現するために起業した。

 創業当初から「モノづくり系の化学ベンチャー企業は事業化に資金と時間がかかるために、多額の事業資金を集めるというハードルが非常に高く、成功は難しいと、多くの方から助言された」と、吉野氏は語る。

 同社は現在、役員と従業員を合わせて30数人、資本金約20億円の企業に成長している。モノづくり系の化学ベンチャー企業として、次々と立ちはだかる難問をどのように克服し、事業化を成功させてきたかという経緯を、吉野氏に聞いた。

注:マイクロ波化学は創業した2007年8月当時は、「マイクロ波環境化学」という社名だった。2011年11月に社名を、現在のマイクロ波化学に変更した。また、本社所在地は2012年10月に大阪大学吹田キャンパスのテクノアライアンス棟に移動した。