2015年3月2日、富士通セミコンダクターとパナソニックのシステムLSI事業の統合が完了し、日本政策投資銀行も出資して新会社「ソシオネクスト」として事業を開始した。システムLSIの設計・開発にフォーカスし、富士通とパナソニックの両グループの連結対象にはならない、独立したファブレス半導体としての船出である。

 しかし、現時点で同社の明るい未来を想像している人は少ない。その理由は明快だ。システムLSI事業は、日本の半導体産業が凋落した主因として挙げられる事業である。しかも、同社の強みは、広く一般に認知されているとは言えない。例えば、ルネサス エレクトロニクスは、よくも悪くも「マイコンの会社」「自動車用半導体が強い会社」というイメージがある。こうした分かりやすい看板が、同社には見えない。

 とは言え、同社が何の勝算もなく事業を始めるとも思えない。富士通とパナソニックから引き継いだ、多くの開発案件でスキルを磨いた設計部門と豊富な設計資産は、確実に同社の競争力を高めることだろう。また、京セラなどの経営者として豊富な経験をもつ西口泰夫氏を代表取締役会長に、富士通セミコンダクターの井上あまね氏を代表取締役社長兼COOに配している。西口氏は、京セラで稲盛和夫氏の薫陶を受け、特に新規事業の開拓で手腕を発揮してきた人物である。また井上氏は、同じく富士通出身の慶應義塾大学の田口眞男氏が「社長に井上氏を据えたところに本気度を感じる。井上氏はシステムLSIの設計エンジニア出身ではなく、またコンサバな発想の持ち主でもない」と評するように、日本の半導体メーカーの経営者が持ちがちな足かせとなる過去の成功体験とは無縁の人物だ。

 状況は最悪、役者は魅力的。誰が見ても困難な状況にある同社に、両氏がどのような活路を拓いていくのか、興味は尽きない。

【質問1】
ズバリ、同社の事業に勝機を見出すことはできるのでしょうか?

【質問2】
同社は、どのような市場を対象にした、どのようなビジネスモデルでの事業を進めるべきでしょうか?

【質問3】
同社の競争力を一層高めるためには、何が必要でしょうか?

 回答者は以下の通り。

田口眞男氏
慶應義塾大学
「難しい仕事に挑むSoCゼネコンを目指せ」参照

大山 聡氏
IHSテクノロジー
「独自IPを基に徹底的にASICにこだわれ」参照

和田木哲哉氏
野村證券
「過去を否定する勇気を内外に示せ」参照

湯之上 隆氏
微細加工研究所
「ニッチの集合体SoCではマーケティングこそが最重要」参照

清水洋治氏
某半導体メーカー
「“チップ性能に固執せずシステムを大局的に捉えろ」参照

表1●回答のまとめ
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