今、FMEAを学ぶ日本メーカーの技術者が増えていると語る國井氏
今、FMEAを学ぶ日本メーカーの技術者が増えていると語る國井氏
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 トラブルを未然に防ぐために使われるFMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)が今、日本メーカーの技術者の間で注目されている。FMEAは、システムを構成する部品やモジュールに故障が発生した場合に、そのシステムにどの程度の影響が及ぶかを解析する手法。これにより、各故障モードの致命度を明らかにし、対策の優先順位を相対的に判断できるようにする。

 だが、FMEAは従来からある手法。なぜ今、FMEAが注目されているのか。「技術者塾」において「シンプルで強力なFMEAとDR ─導入事例とその体験実習─」と「シンプルで強力なFTA ─導慢性トラブルを撲滅する─」の講座を持つ、國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏に聞く。(聞き手は近岡 裕)

──自動車業界で大規模リコールが止まりません。直近では、タカタのエアバッグやホンダのハイブリッド車の連続リコール問題が世間を騒がせました。しかし、これらだけではなく、大規模リコールのニュースは珍しくなくなっています。日本企業の製品の品質に何か起きているのでしょうか。日本企業はFMEAなど、品質トラブルを未然に防ぐ手法を実施してきたはずなのに。

國井氏:実は今、FMEAのセミナーや本が人気なんです。8~10年ほど前は見向きもされなかったのに。セミナーのタイトルに「FMEA」などと書こうものなら誰も来ない。本にしても、権威ある日科技連などが堅いものを書いても誰も買わない。そんな時代だったんだけど、あるとき大手自動車メーカーが独自のFMEAをつくりました。そこから、「やっぱり、FMEAは重要だね」という認識が日本企業の間に広まったんです。

──2009年に米国発で世界中に広がったトヨタ自動車の大規模リコール問題は記憶に新しいところです。この“事件”がきっかけになったのでしょうか。

國井氏:日本企業が「品質の病気を患った」という表現をするならば、発症は2001年ですね。

──日本の自動車メーカーが、本格的なグローバル展開を始めた頃ですね。

國井氏:偶然にも、2001年は「3次元CAD元年」と言われています。設計の手法が変わってきて、さらに本格的なグローバル展開が始まった。それと時を同じくして、品質のトラブルが増えてきた。「これではいかん、何かカンフル剤を打たなければ」ということで、FMEAなどの手法の重要性を日本企業が再認識したということでしょう。