2015年4月5日付の日本経済新聞は、シャープが中小型液晶事業を分社化し、産業革新機構(以下、革新機構)と出資交渉に入る方針だと報じた。その内容は大きく4つある。(1)2015年度中に営業・開発部門を含めて中小型液晶事業を分社化、(2)分社化した事業会社に革新機構が1000億円規模で出資、(3)シャープは分社化後も51%超を出資、(4)革新機構の出資先はシャープ本体となる可能性もある。

 ロイター通信は、革新機構とシャープの交渉はまだ始まっておらず、監督官庁の経済産業省に打診した段階と伝えている。本件について我々は真偽を確認していないが、報道に関する見解を以下にまとめる。

 我々は4月17日掲載の本コラム「シャープ復活への道――デバイスはあらゆる選択肢を検討すべし」で指摘した通り、液晶事業については分社化を通じて経営責任を明確化した上で、あらゆる選択肢を考慮できる体制にするのが望ましいと考える。分社化に踏み切るのであれば、ポジティブにとらえたい。

 ただし、中小型液晶事業だけを切り離す場合、大型液晶やLED、半導体、カメラモジュールといった他のデバイス事業の処遇が問題となる。特に、大型液晶は堺ディスプレイプロダクト(SDP、第10世代パネル)の株式38%を保有しており、企業体としては大きい。自社での存続には継続的な投資が必要であり、他社との連携や売却、撤退も容易ではないだろう。

 中小型液晶については、亀山第1工場(第6世代パネル)を自由に操業ができる工場として買い戻せるか、亀山第2工場(第8世代パネル、8~20型で埋まればベストだがスマホ向けのみでは難しい)の売却または全IGZO化が鍵となる。