ここでは、筆者の同僚であるドイツ証券 クレジットリサーチの村田昭仁による、シャープの資本増強に関する考察を紹介したい。要点は「優先株発行による資本増強は、シャープの株価や収益に対して複数のリスク要因を内包する」という点である。

 シャープの今期計画当期損益である300億円の赤字を前提にすると、期末自己資本は約2150億円、自己資本比率は10%を下回る。不採算事業の縮小・撤退を含む構造改革を徹底的に行えば、損失がさらに膨らむ可能性もある。信用維持に向けた資本拡充策(利益創出、増資、疑似資本取り込みなど)が必要な状況だ。利益創出は資産売却(含み益実現)や債務免除を含み、増資は普通株/優先株発行による。疑似資本はハイブリッド証券/ローン取り込みを指す。

 ここで、最も合理性の高い手段が増資だ。需要次第では必要規模の調達ができない恐れのある普通株でなく、優先株による増資の方が妥当だろう。これと銀行借入金の期限前返済との組み合わせが、債務株式化(Debt Equity Swap)である。