昨年末に本欄で「日本の半導体商社はもっと図々しくなれ」と題して持論を展開したところ、多くの関係者から感想を寄せていただいた。国内半導体商社の置かれた現状に対して、危機感を持たれる方が増えているためではないかと思う。

 「図々しくなれ」と言っても、具体的にどうすべきか、自社の存在意義を増すための方策をイメージできない場合は多いだろう。今回はそのあたりに着目し、商社の戦略に対する持論を述べたい。各社が抱える課題は千差万別なはずで、全社に共通の「正解」があるとは思えないが、筆者の私見を戦略立案の何らかのキッカケにしていただければ幸いである。

 半導体や電子部品だけを取り扱っている商社、システムや電子機器も同時に取り扱っている商社など、半導体商社の業態は多様だ。いずれにしても、ハードウエア製品の販売業務が中心で、場合によって技術サポートを付加する、というのが一般的なスタイルだろう。取り扱う製品には通常、競合品が存在し、価格や性能でどちらが優位か、顧客サポートを加えることでその優位性が変わるか、顧客から半導体メーカーへの要望がある場合にそれをメーカーに聞き入れてもらう交渉ができるかどうか、などが競争軸になる。

 取り扱う製品の汎用性が高い場合は競合品も多いので、安定性の低い「取るか取られるか」のビジネスになる。そもそも半導体市場は汎用性の高い製品同士がコストパフォーマンスを競うことで成長してきたわけで、売り手と買い手の関係が1回の商談ごとに完結する「フロー型ビジネス」が繰り返されてきたといえる。一度商談をまとめて顧客と良好な関係を築けば、「今後もよろしく」と継続性を保ちやすくなるが、次回の商談が保証されるわけではない。その意味で、安定性に乏しいことがフロー型ビジネスの特徴だ。

 このような環境下では、実績に勝る半導体メーカーや半導体商社は、業界での信頼を得ておりコストでも優位に立てるため、ビジネスの継続性を保ちやすい。言い換えれば、汎用品で高いシェアを維持しているメーカーや売り上げを伸ばしている商社がフロー型ビジネスで優位に立つのは必然である。