IoT(Internet of Things)の発展においては、社会のありとあらゆる所に存在しているセンサーからどのようにデータを収集するのかが重要な問題になります。もちろん、有線でつながるセンサーもありますが、今後は従来と比較にならないぐらい多くのセンサーが社会にばらまかれるはずです。そこには、無線通信と省電力化の技術が欠かせません。
そこで今回は、社会に莫大な数のセンサーをばらまき、それらをつなげることの課題について、神戸大学大学院システム情報学研究科情報科学専攻教授の吉本雅彦氏、同教授の太田能氏に話を伺います。
――現在の研究テーマについて教えてください。
吉本 我々は、「センシングデータの標準化」と「低消費電力化の技術開発」を垂直統合で進めることによって、世界一の「低消費電力通信センサーアーキテクチャー」を構築したいと思っています。センシングデータのフォーマットや通信プロトコルを整備して、これらに最適化したセンサーアーキテクチャーをつくることで、ウルトラローパワーを実現できるのです。
――垂直統合、ですか。
吉本 技術の広がりという意味では、水平分業で個々のプレイヤーがそれぞれ素晴らしい技術を開発した方が汎用性は高いでしょう。しかし、バッテリーレスあるいはワイヤレスで1mm以下の非常に小さいセンサーを作ろうとしたら、やはり特定の分野に最適化したものにしないと究極のパフォーマンスが出ません。
――例えばヘルスケアなどに用途を絞るということですか。
吉本 そこまで絞ると広がりがなくなるので、あくまでセンサーネットワーク、センシングビッグデータという範囲で考えています。ヘルスケアも有望な応用先の一つです。ただし、用途ごとに別々に進めるのではなく、一緒に協調して進めたいということです。