IoT(Internet of Things)の発展においては、社会のありとあらゆる所に存在しているセンサーからどのようにデータを収集するのかが重要な問題になります。もちろん、有線でつながるセンサーもありますが、今後は従来と比較にならないぐらい多くのセンサーが社会にばらまかれるはずです。そこには、無線通信と省電力化の技術が欠かせません。

 そこで今回は、社会に莫大な数のセンサーをばらまき、それらをつなげることの課題について、神戸大学大学院システム情報学研究科情報科学専攻教授の吉本雅彦氏、同教授の太田能氏に話を伺います。

――現在の研究テーマについて教えてください。

吉本雅彦氏
よしもと・まさひこ●神戸大学大学院システム情報学研究科情報科学専攻教授。1977年名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了。同年三菱電機入社。1998年同社情報技術総合研究所マルチメディアプロセッサ部部長。2000年金沢大学工学部電気電子システム工学科教授。2004年神戸大学工学部情報知能工学科教授。2010年神戸大学大学院システム情報学研究科教授、現在に至る。博士(工学)。高性能、高信頼、低消費電力VLSI設計技術開発に関する研究に従事。1988年近畿地方発明表彰発明奨励賞受賞。1990年および1996年にR&D100賞受賞。2005年に電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞受賞。2009~2010年にIEEE SSCS-Kansai Chapter Chair、2011~2013年に電子情報通信学会集積回路研究専門委員会委員長を歴任。2014年に電子情報通信学会フェロー。
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吉本 我々は、「センシングデータの標準化」と「低消費電力化の技術開発」を垂直統合で進めることによって、世界一の「低消費電力通信センサーアーキテクチャー」を構築したいと思っています。センシングデータのフォーマットや通信プロトコルを整備して、これらに最適化したセンサーアーキテクチャーをつくることで、ウルトラローパワーを実現できるのです。

――垂直統合、ですか。

吉本 技術の広がりという意味では、水平分業で個々のプレイヤーがそれぞれ素晴らしい技術を開発した方が汎用性は高いでしょう。しかし、バッテリーレスあるいはワイヤレスで1mm以下の非常に小さいセンサーを作ろうとしたら、やはり特定の分野に最適化したものにしないと究極のパフォーマンスが出ません。

――例えばヘルスケアなどに用途を絞るということですか。

吉本 そこまで絞ると広がりがなくなるので、あくまでセンサーネットワーク、センシングビッグデータという範囲で考えています。ヘルスケアも有望な応用先の一つです。ただし、用途ごとに別々に進めるのではなく、一緒に協調して進めたいということです。