少々下品な物言いで、言い出し屁(いいだしっぺ)という言葉がある。最初に臭いと言い出した者が、おならをした当人だという意味である。または、自分の無実や潔白であることを最初に言い出した者が、本当の犯人であることも言う。

 対して、最後っ屁と言うことがある。イタチが追い詰められたとき、敵を追い払うために悪臭を放つことで、とにかく臭いらしい。転じて、せっぱつまったとき、苦し紛れに思い付く手段の事を言う。言い換えれば、窮余の一策、最後の手段ということか。

 最初からおならの話で恐縮だが、最後っ屁はともかく、言い出しっぺはいいのではないかと、私は思うのである。

 確かに、本来の意味のように、自らの無実や潔白をことさら言うのはよくないが、ビジネスの世界では、とにかく先にするのがいいと思うのである。

 よく会議の席で、自分の意見を言わずに黙って他者の意見を聞くだけで何も言わない人がいる。そうして、何か意見を求められると、当たり障りのない、議論の方向に何も関係しない、どちらとも言えない意見でお茶を濁し、方向性が見えて大勢が決まった途端に、自分の意見は最初からそうだったと大見得を切るような人がいる。

 そのようなことを後出しジャンケンと言うのだが、私は、例え間違っても言い出しっぺが美しいと言いたいのである。