これまで2回に渡って、スポーツ用に特化してヒットしているワイヤレスヘッドホン「エクササイズフリークAH-W150」の開発プロセスを分析してきました。ディーアンドエム(D&M)ホールディングスが「DENONブランド」で販売している商品です。「ランニングやフィットネスで激しく動いても邪魔にならない」「高音質の音が当たり前に聴ける」「汗をかいても壊れにくい」といった特徴がスポーツ好きのユーザーに好評を博しています。
その分析から浮かび上がったヒットの要諦は、四つありました。
- その1:
- まずコンセプトありき、具体的な想定ユーザーのペルソナを特定せよ!
- その2:
- 開発プロセスを従来とは180度違うスタイルに変えてみるべし!
- その3:
- 開発者自身がユーザーとなって、徹底的に体験してみるべし!
- その4:
- ほかの部署の同僚が、喉から手が出るぐらい欲しがる商品をつくり出せ!
今回は「エクササイズフリーク」の開発を手掛けたD&Mホールディングスの開発チームの3人、福島欣尚氏、冨田洋輔氏、成沢真弥氏と、マーケティング担当の宮原利温氏へのインタビューをお届けします。(以下、聞き手は筆者)
Bluetooth機能の存在を知らない人も
―― エクササイズフリーク、販売が好調のようですね。スポーツ用のヘッドホンというコンセプトは、最初からユーザーに受け入れられたのですか。
宮原 最初からではありませんでした。特にBluetoothのワイヤレス機能については発売当初、まだ誤解が多い印象でしたね。まず使い方が分からないという人は多かったですし、ワイヤレスは音が悪いのではないかというイメージも強かったと思います。そもそも、スマートフォンは持っているけれど、Bluetooth機能の存在を知らない人も少なくありませんでした。
そこで、家電量販店でイベントを開催するなど、利点を体験してもらう取り組みに力を入れたんです。イベントでは、再生機器とヘッドホンの接続方法から紹介するようにしています。イベントを開いてみて、やはり「体験」が重要なのだと思いましたね。ヘッドホンをつなげられないと諦めてしまう人も多いので、販売員の説明がなくても接続できるように利用方法を解説するビデオも制作しました。イベントで実際にヘッドホンを着けてもらい、音を聴いてもらうことで便利さへの認知度が高まったと思います。
エクササイズフリーク専用のWebサイトを立ち上げて、利用シーンやライフスタイルを紹介することにも取り組みました。特に、ランニングでの使用に関心を持ってくれるユーザーが多い印象です。ほかのメーカーからも同じ分野の商品が出てきて、スポーツ用ヘッドホンというカテゴリー自体が次第に広がってきました。その中でも、エクササイズフリークは音のよさでユーザーを引き付けられていると思っています。