木下紫乃氏をゲストに迎えた「やさぐれ放談」の第2回。会社を辞めた2人のおじさんたちと、木下氏による鼎談は、「キャリア」とは何かという議論に進んでいく。大企業が次世代リーダーとして選ぶ人材は、本当にリーダーとしての資質を備えているのか。社員を品質管理の型にはめ、不良社員を認めない企業風土になっていないか。大企業を経験した瀬川秀樹氏と長岐祐宏氏、そして大企業を外から観察してきた木下氏は、イノベーションがなかなか生まれない日本企業の体質に迫る。
左から、瀬川氏、木下氏、長岐氏(写真:花井 智子)
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長岐 そもそも、瀬川さんと木下さんは、なぜ知り合ったんですか。

木下 前職の後輩が、瀬川さんがいたリコーの担当だったんです。大企業向けの社員研修を設計する会社にいたんですけど、その後輩が「リコーにすごい面白い人がいる」と言っていて。それが瀬川さんでした。その後輩は、なぜかリコーの社員研修に参加していたりして。

瀬川 もう少しきちんと説明すると、リコーにいるときから僕は若手育成の研修をやっていたんです。同じ会社の中だとどうしてもダイバーシティー(多様性)が低くなる。男ばかりになってしまうので、女性を入れなければと思ったんです。

 でも、なかなか参加する女性が集まらなくてね。足りないので、社外の研修会社の社員に声を掛けて参加してもらったという経緯です。完全にリコーの社員と同じことをやってもらいました。研修会社も、よく許したよね(笑)。

木下 「リコーに面白い人がいる」ということを聞いてから2年後くらいに、自分が設計する研修のメンターを探していたんです。そのときに後輩に聞いた瀬川さんの話を思い出して、お願いしました。

瀬川 夜遅くに研修をやったんだよね。

木下 ご自身の仕事が終わった後、午後8時ころから、他社の研修参加者を手弁当でご指導くださる姿を見て「この人すごいわ」と思いました。

瀬川 でも、ひどいんだよ。頼んだ本人が、研修が終わる前に会社を辞めちゃってさ(笑)。

リアル開発会議 それで、前回の大学院の入学につながるわけですね。

長岐 そういえば、前回、木下さんは昭和女子大学のキャリアカレッジの事務局長をしているという話をしていましたよね。

木下 はい。

長岐 僕ね、前職で人事部にもいたことがあって、「キャリア」という言葉があまりよくないと思うんだ。

木下 実は、私もあまり好きじゃないです(笑)。でも、なぜよくないと思うんですか。

長岐 「キャリア」という言葉には、あまりクリエーティブなイメージを感じないんだよね。

瀬川 どういうこと? 意味が分かんない。

長岐 例えば、「キャリアシート」って、あるでしょ? 要するに「過去に何をやってきたか」を書き記したものです。でもね、大切なのは「これから何をするか」でしょう。本来、履歴は関係ないんだけど、特に日本ではそれが重視される。だから、クリエーティブな感じがしないんですよ。

瀬川 どうです? 木下さん。元研修系なんだから「キャリアを積むために…」とかたくさん言っていたでしょう。