日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「エネルギー」の直近3週間(2015年3月11日~3月30日)のアクセスランキングでは、バイオマス発電と地域振興に関する記事「購入電力9割減だけではない、コマツがバイオマス発電を選んだわけ」が、12位にランクインした。
石川県にあるコマツの粟津工場で、高効率のバイオマス・コージェネレーション・システムの本格稼働が2015年4月に始まる。燃料に間伐材など未利用の木材資源を用い、ボイラーで高圧の蒸気を発生させて、工場用の圧縮空気用動力源や蒸気式発電機、工場内冷暖房用熱源として利用し、購入電力量を削減するものだ。
工場の購入電力削減を目的としたバイオマス発電への取り組みが、いつのまにか地域振興につながっていく。まず、(1)放置されている大量の間伐材を木材チップとして消費する過程で、山林が整備される。(2)安定的にチップ供給を受ける目的で、コマツが製造業で培った品質管理や生産管理、コスト管理のノウハウを林業の生産現場に移植する。さらに、(3)バイオマス発電に関連する「ドラムチッパー」や「ボイラー」などの機器を、地元の中堅機械メーカーが製造する、といった具合だ。
これらの効果を目の当たりにした石川県の谷本正憲知事は、「バイオマス利用による省エネ、CO2削減、林業の再生、地元の機械産業の振興、という一石四鳥の事業。石川モデルとして全国の地域活性化の見本になりたい」とした。
コマツにとって今回のプロジェクトは、省エネのための設備更新という位置づけであり、コージェネ・システムを外販したり、電力を売電したりといった事業はまったく考えていない。「コマツにとっては一銭にもならない事業」(コマツ 代表取締役会長の野路國夫氏)である。
しかし同時に、「エネルギーの地産地消とは、地域の産業と結びついた形で実現されるべきではないか。ヨーロッパなどで見られるように、山林に近いところに小規模で高効率のバイオマス・コージェネ・システムがたくさん点在する姿が理想」(野路氏)との考えに基づき、今回の粟津工場の成果を全国の製造拠点に展開していく計画だ。
そういえば、若いころにバイクで北海道を旅行した際に、林業に従事する方の自宅に泊めていただいたことがある。そのとき酒を飲みながら、「なかなか故障しないし、故障してもすぐに修理に来てくれるコマツが一番だ」と言われたのを思い出した。修理対応の素早さがその人の心をつかんだように、バイオマス発電で地域振興を実現すれば、新たなコマツ ファンの獲得につながるだろう。