前回は「Wireless」というキーワードから狼煙(のろし)、腕木信号、電信、電話、ラジオ、TVそして携帯電話に至るコミュニケーション手段の発展について考察してみました。今回はコンピューターネットワークについてのおはなしです。

Early days

 コンピューターネットワークはもともと独自のインフラを持たず、既存のインフラ(主に電話網)に寄生するメタメディアとして出発しました。ごく初期には計算機センター(EDPS)に鎮座するメインフレーム計算機に端末機(Terminal)を接続して「使わせて頂く」ための仕組みで、この時点ではまだ「コミュニケーション手段」とは言い難いものでした。

 コミュニケーション手段としてのコンピューターネットワークはやはり、1970年代にパーソナルコンピューター(パソコン、PC)が普及してからになります。当時のパソコンはほとんど実用性のない高価なオモチャに過ぎませんでしたが、そのオモチャを弄んで喜ぶマニア同士が情報を交換するため、音響カプラーと電話回線で互いのパソコン同士を接続した「草の根BBS(Grass roots BBS)」がコンピューターネットワーク黎明期の姿です。

 BBSというのは「掲示板(Bulletin Board Service)」の意味で、ホスト機(サーバー)を通じてユーザーが発言を登録したり、他のユーザー発言を参照できるサービスを指します。まだ「ネットワーク」という言葉が使われていなかった草の根時代、既に「情報の貯蔵・参照能力」が活用されていたことには注目すべきでしょう。

 1980年代に入ると全国レベルのサービス網を持つ商用サービスが始まります。米国ではCompuServeやAmerica Online(AOL)、日本ではNifty-ServeやPC-VANなどが一時代を築きました。これらのパソコン通信サービス(英語ではOnline Service)は「フォーラム」「メール」「チャット」などの機能を備え、草の根BBSよりも「コミュニケーション手段」らしさを増します。今日隆盛を極めるFacebookやTwitterなどのSNS(Social Network Service)の機能は、当時のPC通信と本質的にほとんど違いません。私も知人に勧められてmixiを始めたときは、「これって昔のNifty-Serveとほとんど同じじゃない?」という既視感を感じたものでした。