「MediaTekの強さの源泉とその波及効果」と題して、MediaTek社の強みの源泉を考察し、そこから学べることを抽出することを目的としたSCR大喜利。今回の回答者は、某ICT関連企業のいち半導体部品ユーザー氏である。

いち半導体部品ユーザー
某ICT関連企業
ICT関連企業で装置開発に必要な半導体部品技術を担当。装置開発側の立場だが部品メーカーと装置開発の中間の立場で両方の視点で半導体部品技術を見ている。

【質問1】MediaTek社の強さの源泉はどこにあり、日本の半導体メーカーは、同社からどのようなことが学べるでしょうか?
【回答】 M&Aなどによる技術のインプットと、顧客に提供する技術のアウトプットのバランスの絶妙さ

【質問2】MediaTek社が強みを持っている手法は、スマートフォン以外の機器開発の方法、電子業界の構造にどのような波及効果がありますか?
【回答】ビジネスシーンに応じた勝ちパターンを導き出すMediaTek社の思考形態

【質問3】MediaTek社のビジネスの方法に死角があるとすれば、どのような部分でしょうか?
【回答】ターゲットアプリケーションが多数に分散すると、強みが発揮できなくなる可能性がある

【質問1の回答】M&Aなどによる技術のインプットと、顧客に提供する技術のアウトプットのバランスの絶妙さ

 MediaTek社は、製品開発の全てを自前の技術だけで作り上げるクローズドな半導体メーカーと、逆にできるだけエコシステムを活用するオープンな半導体メーカーのちょうど中間に位置付けられるかも知れない。同社からまず学べることは、勝ちパターンを決めつけて製品やビジネスモデルを考えるのではなく、ビジネスシーンに応じて取りうる方法を考え抜き実現すること。さらには、人が使っている方法をまねするのではなく、独自の方法を考えることであろう。

 ただし、M&Aなどによって社外から収集する技術の内容と、顧客に対して提供する情報の内容がそれぞれ的確でなければ、MediaTek社は成功しなかったかも知れない。どのような技術を自分の手の内に置いておくべきなのか、その技術を使ってもらうためにどのような形で何を提供すればよいか。技術の収集と提供のバランスが絶妙であり、これが成功の要因になっていると考える。

 同社を成功に導いている技術の収集と提供のバランスが、偶然できあがったものなのか、戦略的なものなのか。疑問は残る。しかし、ここでは関係無いと思う。顧客にとって必要だと思う技術が今自社の中になくても、何とかしてかき集め、顧客が望む形で提供する。こうした事業が成功していることを示した点が重要と考える。日本の半導体メーカーが同社から学ぶべきことは、今MediaTek社が行っている手法をそのまままねをすることではなく、まねをせず独自の方法を考えることである。