今後10年超にわたるICT(情報通信技術)やエレクトロニクス業界の長期トレンドを予測したレポート『メガトレンド2015-2024 ICT・エレクトロニクス編』(日経BP社)の著者である川口盛之助氏と山本一郎氏が、これから拡大する市場や、企業・技術者の在り方を語り合う対談の第6回。バズワードの裏側に隠れた本質をきちんと考え続けることの大切さを2人の奇才は説く。
山本 僕は今、プロ野球の仕事をやっているんですけど、主に編成と育成のデータを担当しています。楽天ゴールデンイーグルスのデータ管理をやっているんですけど。(プロ野球での奮闘の様子は、日経ビジネスオンラインのこちらのコラムで)
選手の育成について「どうやって育てよう」という考え方がコーチになかったら、その選手はどうやって自分のいいところを伸ばしていいか分からないですよね。例えば、細くて足の速い選手がいます。彼の持ち味はスピードだと分かりきっている以上、たくさん食わして長距離砲にするというわけにいかないじゃないですか。そういったところから考え直さないとダメじゃないでしょうか。それはエレクトロニクス業界でも共通だと思います。
「今、与えられてる条件はこれです」ということがある。選手の専門性というのは、結局ピッチャーはピッチャー、キャッチャーはキャッチャーで、もう決まっているわけで、自分の専門領域の中で最大限のパフォーマンスを出すためのトレーニングをしています。そういう選手たちに、「チームの勝利にどうしたら貢献できるのか」ということをきちんと言ってあげないといけない。選手たちもできることが限られているから、きちんと補助してあげなければならない。
山本 その中で一本立ちする選手というのは、自分で考えて「俺、こういう選手になりたいんですよね」「俺、この待ち球しか待てないんでここをしっかり待って頑張ってやっていきますよ」という人です。そういう選手は伸びていくんです。勝手に伸びていく。そうすると「あいつを育てたのは俺だ」とかいう手柄話になるんですが、限られたプロフェッショナルな世界でも自分の進んでいく道をちゃんと選んで、伸びていく人はいるんです。
技術者も同じで、自分が選んだ専門を通じて取り組めることって、本当にたくさんあります。それは15歳だから優れているかというとそうではなくて、45歳でも新しい領域に興味をもって論文を読み始めたらいろんなことが分かるはずです。「好奇心」というのは、自分が知りたいことに沿って、専門性の幅を広げてくれる心の働きです。それこそエレクトロニクスのように、ある程度一つのストーリーが終わった産業分野でも「次に何があるんだっけ?」と考えられる人をどうやって大事に、意思決定の中心に置いていくかは、ものすごく大事なマネジメントだと思います。
今井 なるほど、考えるべき次のストーリーはエレクトロニクスでも、まだまだたくさんあると。