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 今後10年超にわたるICTやエレクトロニクス業界の長期トレンドを予測したレポート『メガトレンド2015-2024 ICT・エレクトロニクス編』(日経BP社)の著者である川口盛之助氏と山本一郎氏が、これから拡大する市場や、企業・技術者の在り方を語り合う対談の第1回。
 技術の成熟期に入ったICT・エレクトロニクス業界では従来のトップダウンで演繹的な技術開発手法から、ボトムアップで帰納的な手法の導入に向かいつつある。それに伴って、人体や生命科学をはじめとする異分野との境界領域に新たな市場が広がっていく。2人の奇才の目には、どんな未来が映っているのか。

(司会は、今井拓司=日経エレクトロニクス編集長)

今井 今回の対談では、川口さんと山本さんがレポートの中で描いた産業や社会の未来図を前提に、エレクトロニクス関連の大手企業や、いわゆる「メーカーズ」のスタートアップ企業などの今後を占っていただきたいと思っているのですが。

山本 ちなみに「メーカーズ」って、どういう概念で捉えているんでしょうか。どちらかというとスタートアップ企業の中でもハードウエア領域の方向、つまり、今までスタートアップと言えばアプリ(アプリケーション・ソフトウエア)がメインだったけれども、道具の方に寄ってきたというイメージでしょうかね。

 でも、メーカーズと呼ばれている人たちと話していると、彼らの中では「メーカーとは何か」といった定義面を落とし込んでいなかったりするんです。私たちがイメージしている単純な製造業としての「メーカー」とは、彼らのニュアンスがだいぶ違うんですよ。

今井 それは、どういう感じに違うんでしょう?

投資家/ブロガー/経済ジャーナリストの山本一郎氏(左)、盛之助 代表取締役社長の川口盛之助氏(右)(写真:加藤 康)
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山本 古い人間からすると、従来型のメーカーがファブレス企業と、モノをつくることに特化したファウンドリ企業に分解されて、その中で新しい生態系が生まれているイメージじゃないですか。でも、メーカーズの彼らからするとモノをつくるというよりも「プロトタイピング」にフォーカスしていて、モノに落とし込むことそのものよりも、それが実現するファンクション(機能)に特化している気がします。

川口 モノをつくるための「ツール」や「ライブラリ」みたいなものがサクサクと存在していて、これまでソフトウエア志向のバーチャルな概念で開発することが常識だった人たちが、リアルなモノをつくっていいんだというイメージになっているよね。

 モノをつくる際にこれまであったしがらみや常識は全然関係なくなっていて、「ソフトウエアをつくるようなセンスの人たちが、たまたまハードウエアをつくっている」というノリは、従来の常識に捉われている集団から見るとすごく違和感があります。

今井 私のイメージだと、メーカーズの人たちはプロシューマー的というか。そういう感じかなと。