イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 いつも言うが、開発を進める中で駄目と分かったら止(や)めることだ。これは本質的な話だが、開発を進めて行くと、かなり早い時期に、上手く行きそうか駄目か、分かるのである。

最初は、さあ行くぞ、絶対に上手くいくに決まっていると思っても、駄目なものはダメ。設計がいまいち、加工が上手くできない、思ったよりお客様の反応が悪いなどなど、駄目な要素が顕在化してくる。

 だから、駄目だと思ったらできるだけ早く終わりにすれば、誰を恨むでもなし、在庫を抱えることもなく、それはそれは平和に終わるのだ。

 逆に、誰もが駄目だと感じているのに開発を進める場合がある。部長の肝いりだ、役員が期待している、社長が気にしている…、などなど、開発が上手くいくと思い込んでいる者の顔を潰してはいけないと、まさに、止むに止まれぬ状況に追い込められてしまうのだから大変だ。

 だが、いくら頑張っても駄目なものはダメ。駄目と言えばそれで終わるのに、言えないのである。だからこそ、私は声を大にして言うのである。駄目だと分ったら止めるしかない、のである。

 しかし、最近こんなことがあった。上手くいくと確信できる開発案件を、自らの意志で止(と)めたのである。

 駄目ではないのにとめたのはなぜか、そこには、明確な理由がある。その会社にとって今、その案件を進める時期ではないことが判明したからである。