2015年は、「Mooreの法則」が提唱されてから50周年に当たる。この間、半導体はMooreの法則に沿う高集積化・低コスト化によって目覚しい発展を遂げ、それを利用する電子機器や人間社会の姿を大きく変えてきた。そしてMooreの法則は、装置、材料、デバイス、機器メーカー、サービスプロバイダーといった産業界の関係者が暗黙のうちに予定調和を図るための「絶対的な拠り所」として機能してきた。

 一方でここに来て、経済的・工学的・物理的限界など、さまざまな要因からMooreの法則の限界が叫ばれている。この先、エレクトロニクスはどのような方向へ進化し、その時、Mooreの法則に代わる新たな進化軸は果たして生まれるのか。今回のSCR大喜利では、「“拠り所”なき時代のエレクトロニクス業界を占う」をテーマとし、エレクトロニクス業界に暗黙の予定調和をもたらす“拠り所”としてのMooreの法則の意味について考えることを目的とした。

 回答に先駆けて、服部コンサルティング インターナショナルの服部毅氏から、「Mooreの法則は今後も当分の間機能すると信じている。7/5nmまでは技術的なメドが立っているとIntel社もIMECも言っている。真偽はともかく、その気迫に敬意を表したい」と、テーマの意義を問い直す意見をいただいた。半導体業界に身を置く方の視座から見て、もっともである。

 Mooreの法則には、現象を客観的に捉えたように感じさせる“法則”という言葉が入っている。しかし実際には、半導体業界全体で取り組むべき努力目標、継続的な発展を目指すスローガンという意味合いがある。このため、Mooreの法則を継続するために何をすべきかは、もちろん議論を尽くすべきことであろう。その一方で、カリスマ経営者が引退した後の経営体制を考えておかないと企業の長期存続が危うくなるのと同様に、あえてMooreの法則なき後に想いを巡らせることも半導体産業の継続的な発展に必要になるのではないか。このような指針で、同氏からも回答をいただいた。回答者に投げかけた質問は以下の3つ。

【質問1】
技術開発の前提を決める拠り所としてのMooreの法則が機能しなくなった場合、最も大きなビジネスの変更を迫られる業種は何だと考えますか?

【質問2】
Mooreの法則が機能しなくなった場合、エレクトロニクス業界における技術進化/業界勢力図/サプライチェーン/市場規模などのうち、最も大きな影響を受けるのはどのようなファクターだと考えますか?

【質問3】
エレクトロニクス業界でMooreの法則に代わる新たな予定調和の“拠り所”が生まれるとすると、どのような「指標」や「進化軸」に基づくものになると考えますか?

 回答者は以下の通り。

和田木哲哉氏
野村證券
「時間に余裕があるうちに半導体製造装置は脱微細化依存を急げ」参照

三ツ谷翔太氏
アーサー・D・リトル
「応用を基点とした課題の連鎖を探り、事業開発と意思決定を進める」参照

田口眞男氏
慶應義塾大学
「代わりに半導体業界を律するのは、経営指標とカリスマの一言」参照

服部 毅氏
服部コンサルティング インターナショナル
「仮に終焉しても、そこから先は独創力で価値を競う時代が来る」参照

南川 明氏
IHSテクノロジー
「寡占企業が拠り所を失い、業界勢力図は大きく変わる」参照

表1●回答のまとめ
[画像のクリックで拡大表示]