[1]技術情報管理における3つのモデル

 前回は、国際化企業モデルに対応した知識開発、管理、共有の考え方について説明しました。技術情報に関する開発と管理、共有の考え方を抽象化したものを、技術情報管理モデルと呼ぶことにします。今回は、企業の国際化における組織モデルと同様に、グローバル統合とローカル適応の視点で類型化した3つの技術情報管理モデルを紹介します。

図1●技術情報管理モデル
図1●技術情報管理モデル
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[A]分散管理モデル(グローバル統合度:低 ローカル適応度:高)
 分散管理モデルは、各地域別組織の技術情報や知識を分散して保有します。「保有する」とは、他組織の意向とは関係なく、知識の開発や変更ができるという意味です。地域の市場の違いに敏感に反応し、自立した海外子会社が独自に知識開発して「保有する」ことを特徴とすることから、マルチナショナル企業に適した技術情報管理モデルであるといえます。

[B]集中管理モデル(グローバル統合度:高 ローカル適応度:低)
 集中管理モデルは、自動車や電気製品などコスト競争力が重要で、規模の経済を働かせることが効果的である業種に適する技術情報管理モデルです。また、技術情報を本国で集中管理し、どこの海外拠点でも同じ品質の製品を生産することが重要な場合においても威力を発揮します。
 このモデルでは、技術情報は本国で一元的に集中管理されます。地域(海外工場)で発生した生産品質情報は、そこで定められた部品の仕様や品質工程通りに生産されているかチェックすることを目的に、本国へフィードバックされて逐次モニタリングされます。規模の経済でコスト優位性を追求し、中央集権的な組織スタイルで、海外子会社は親会社の戦略の遂行を担う、グローバル企業に適した技術情報管理モデルといえるでしょう。