2015年2月23日は、中国では春節(旧正月)7連休の6日目である。帰省先からのUターンラッシュは連休最終日の24日にかけピークを迎える。春節は年によって1月下旬から2月下旬まで1カ月の幅で前後するが、今年は3月も目前になってようやく、中国人にとっての新年が到来することになる。

 年始めのこの時期は、中国の昇給シーズンでもある。経済特区として知られる広東省の深センでは3月1日から、最低賃金が月額で12%増の2030元(1元=約19円)、非正規雇用が対象の時給換算でも同じく12%増の18.5元にそれぞれ引き上げられることが決まった。うち月額では、中国で初めて2000元の大台を突破したことから、中国メディアは「2000元時代の到来」と大きく取り上げた。

 深センの最低賃金が1000元の大台に乗ったのは2008年のこと。その後、2011年1320元、2012年1500元、2013年1600元、2014年1808元、2015年2030元と毎年のように上がり続けている。EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕は、米Apple社から請け負っているスマートフォン(スマホ)「iPhone」の最大の製造拠点をこの深センに置いていたが、より人件費の安い土地を求めて、2010年から内陸の河南省鄭州に移した。ただ、その河南省でも最低賃金はフォックスコンがiPhoneの生産を開始した2010年には800元だったが、2014年には1400元にまで上昇。人件費が高いとして深センを離れた年の水準を既に超えてしまっている。

 フォックスコンが深センを離れた理由の一つに、深センのある広東省や上海、江蘇省など経済的に進んだ中国沿海地区で、製造業の生産ラインで働きたい若年層のワーカーが減り、人手を集めにくくなっていることがあった。バブル期の日本でもキツイ・汚い・危険の「3K」職業が若者に嫌われたが、今まさに中国で同じ現象が起きているわけで、その動きは沿海地区から内陸部にまで拡大しつつある。