「集団的ゆでガエル状態」に陥らないように

 その答えはシンプルだ。いつも自分が動いていればいいのである。

 簡単な実験をしてみよう。お風呂の中で、少し動くだけで、それが判る。少しぬるめのお湯は、ジッとしていると熱いのか冷めているのか分からない。ところが、少しだけでも動くと、肌に接触しているお湯の温度を敏感に感じることができるようになる。熱いのかぬるいのか分かるのだ。

 逆に、かなり熱いお湯も、ジッとしているとある程度慣れてしまって、熱いのを忘れてしまうこともあるようだ。熱い温泉に入っていて、乱暴にザブンと入ってくる若者に、オイオイと言う、あの状態だ。

 このように、ビジネスマンはいつも動いていれば、周囲の変化を敏感に感じ取ることができる。しかしそれは、個人として、自分で考えて行動しなければいけない。

 個人と言うのは、動いている集団の中に居ても、周囲の者と一緒に動くのはいただけないということだ。これでは、「集団的ゆでガエル状態」に陥る危険がある。(笑)

 いくら動いていても、集団が同じ方向に、それも同じペースで動いていては、周囲の環境が変化しても見えにくい。だから、個人として独自に動かないとだめなのだ。

 最近、このようなゆでガエル現象とも言える結果で破たんした企業をよく見るようになった。それは、それまで順風満帆で、これといった危機もなく、何となく右肩上がり成長を続けてきた企業に多いように思う。

 どことは言わないが、その業態自体のビジネスモデルが変わったのに気付かずに、従来と同じ路線にこだわり、結果、急速な業績不振に陥っている企業を見るにつけ、厳しい言い方で申し訳ないが、企業丸ごとゆでガエル状態であったと言わざるを得ない。

 また、天災に遭い、大きな犠牲を出した時も、ある意味で同じこととは言えまいか。過去の歴史をたどれば、どこの地域にも、ここに災害があったという「碑・いしぶみ」が建っている。それなのに、いつの間にか、もう大丈夫だろうと誰かが住み着き、数十年、数百年を経て、また同じ被害に遭うのである。