WSTSの2014年秋季半導体市場予測では、2014年の世界半導体市場は対前年比で9.0%成長して3331億米ドルに拡大するとしている。この傾向は今年も続き、対前年比で+3.4%成長して3445億米ドルになるとする。

 ますますの成長が期待される半導体市場だが、その中身やそれを支える企業や技術の動向を見ると、大きく質が変わってきているように見える。近年の半導体市場を牽引してきたスマートフォン市場は、規模の巨大さは変わらないものの、成熟感を隠せないようになってきた。一方で、新市場としてIoTやビッグデータ、クラウドといったキーワードで語られる市場の成長が期待されるようになった。

 技術面でも、ニューロチップなどに代表される非ノイマン型コンピューティングの萌芽や人口知能の発展といった、新しいステージの始まりを予感させる技術に注目が集まってきた。こうした変化に対応すべく、企業の買収・合併が進む可能性がありそうです。

 今回のSCR大喜利では、「展望、2015年の半導体業界」と題して、回答者それぞれが注目する2015年に起き得る動きを披露していただいた。今回の回答者は、某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】2015年の半導体業界で、注目している動き・出来事は何でしょうか?
【回答】スマートフォン向けチップで新たに生まれている「ミッドハイ」市場の動向

【質問2】2015年の半導体市場に、大きな影響を及ぼすと考える機器やサービスは何でしょうか?
【回答】やはりスマートフォン

【質問3】2015年、ブレークまたは急展開する可能性が高いと注目している半導体技術は何でしょうか?
【回答】 Android 5.0に対応した64ビット・プロセッサー

【質問1の回答】スマートフォン向けチップで新たに生まれている「ミッドハイ」市場の動向

 半導体業界を牽引してきたスマートフォン、タブレット端末にも、技術の成熟によって限界が若干見えてきた。プロセッサー数を増やす、GPUを増強するという今までの進化におそらく鈍化が起こる。これまでは、右肩上がりの技術進化にばかり注視してきたスマートフォン市場は、第2段階に入り始めている。日本でもSIMフリーを活用した新規参入メーカーやサービスが増えており、低価格化と、ハイエンドよりも若干性能が劣る「ミッドハイ」という市場が活性化している。

 ミッドハイは2年ほど前のハイエンド相当の仕様だが、当時のハイエンドチップをそのまま使わないケースも多い。理由はAndroidのバージョンなど、利用環境が2年で大きく変わっているからだ。そのために最新のAndroidバージョンを実装しても、問題なく動作でき、ハイエンドの準ずる性能を有している新チップが、Samsung Electronics社やQualcomm社、MediaTek社などから発売開始されている。Samsung社では「Exynos5260」、MediaTek社では「MT6591」などがインドやアジア地域でのミッドハイ市場向けにリリースされている。Qualcomm社のミッドハイ向けチップ「Snapdragon610」も同様の市場をターゲットにしている。最も多くの数が出る市場なので、ミッドハイチップの次の仕様に注目したい。

 上記Exynos5260、MT6591は、面積が大きい8コア構成のチップを、性能をさほど落とさないように6コア化し、小型化してインド向けにリリースしたチップ。新興市場のマーケット特性(充電頻度やウエブ閲覧でのプロセッサーパワーのあり方)を理解した上で開発されたもの。こうしたミッドハイ仕様は注視したい。