日経テクノロジーオンラインでは、機器の分解記事は人気がある。今回、日経テクノロジーオンラインの電子デバイス系サイトでアクセス数の多かった記事を調べたところ、1位から3位まで分解記事が占めた。
日経テクノロジーオンラインの電子デバイス系サイト、すなわち、「半導体デバイス」、「半導体製造」、「EDA・ソフトウエア」、「アナログ」、「電子部品」、「デバイス」というテーマサイトで公開した全記事のうち、2015年1月6日~2月6日にアクセス数が多かった上位20の記事を右表にまとめた。第1位と第2位はどちらも中国製スマートフォンの分解記事、3位は韓国製スマートウォッチの分解記事だった。いすれも、分解・分析・記事執筆したのは、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクターの柏尾 南壮(かしお みなたけ)氏である。
1位は超薄スマホ
1位の記事で分解したのは、中国Gionee Communication Equipment(金立通信設備)社のスマホ「Gionee Elife S5.1」である。特徴はその薄さ。現在、一般に使っているスマホのほとんどは厚さ7~9mm前後。カバーを付けて使うと、さらに厚みが増す。だがGionee Elife S5.1の厚みは、ノギスで実測したところ5.18mmだった。薄型化は複数の技術や工夫で達成したと、柏尾氏は見る。
例えば、Gionee Elife S5.1は有機ELディスプレーを採用した。有機ELディスプレーは液晶と異なり、バックライト、反射板、導光板などが不要なため、薄型化効果が大きい品目の一つだという。対角寸法は4.8インチ。720ドット×1280ドットのHD画質である。
糊や接着剤を多用していることも薄型化に効いた。Gionee Elife S5.1ではディスプレーとタッチパネルは接着され一体となっている。ディスプレーを支え、メイン基板との間で壁の役割を果たすセンターパネルに接着剤で張り付けられている。リアカバーの固定も、ネジではなく接着剤を使用している。修理には不向きかもしれないが、薄型化には有効だと、柏尾氏は見る。
Gionee Elife S5.1のバッテリーの厚みは2.8mmと非常に薄い。TDK傘下の香港Amperex Technology社製だ。缶で周囲を覆うタイプのリチウムイオン二次電池は廉価だが、薄型化や任意の形状への加工には不向きである。このため、高額なポリマータイプをあえて選択したのだろうと、柏尾氏は見る。
2位は模倣に徹したスマホ
2位の記事で分解したのは、中国Xiaomi社(シャオミ=小米科技)社のハイエンドスマホ「Xiaomi Mi4」である。Xiaomi社は2010年創業の若い会社だが、2014年の出荷台数は6000万台に達すると予想されている。柏尾氏によれば、Xiaomi社の成功の秘訣は、すでに成功している企業の模倣である。成功企業から学ぶこと自体は広く行われている当たり前のことだが、Xiaomi社の場合、ビジネスモデルにとどまらず、製品のコンセプトやデザインまでが模倣の対象になっている。
例えば、Mi-4の筺体側面にはiPhoneによく似たスリットが入っている。iPhoneでは、このスリットは筺体外周に配置されるアンテナを絶縁する役割を果たしており、機能設計の結果として存在する。しかしMi-4のアンテナは筺体外周ではなく、内部のカバーに設置されている。筐体側面のスリットは機能的に無意味であり、「iPhone風に見せるためのデコレーション」として入っていると考えられる、と柏尾氏は言う。
3位は3G電話搭載のスマートウォッチ
3位の記事で分解したのは、韓国Samsung Electronics社の3G電話機能を搭載したスマートウォッチ「Samsung Gear S」である。Samsung Gear Sでは、通信を含む主要機能を担当するチップセットは米Qualcomm社製だった。同社の通信IC、電源管理IC、ベースバンドおよびアプリケーションプロセッサーが搭載されている。ディスプレーは有機ELで、時計表示を可能な限りアナログ腕時計に近づけている。「これでかなり高級感が出ると感じた」(柏尾氏)。