あるとき、職人さんたちが作った仕込飴を売っている、あるテーマパークから見学に来てくださいと言われました。職人さんと一緒に見に行ってみたら、子供たちが目をキラキラ輝かせながら飴を見ているわけです。そのとき「あれに正規のものではない頭としっぽを入れたら子供たちがガッカリしますよね。あの飴は商品であると同時に、あなたの作品なんです。だから端っこは入れないようにしましょう」と話したら、それから職人さんたちの意識がガラリと変わりました。
重久 実際に、目にすると違うんでしょうね。言葉で言われたのとは。
宇佐美 誰のために、何のために作っているかということです。私たちは企画販売を担当する企業として生産現場に立ち会って、厳しいことを言います。それは、より高いステージに自分たちの商品を持っていきたいからです。職人さんが作った商品が高いステージのマーケットで売られることが、職人さんのモチベーションをさらに上げていくことにつながると思います。しかし、それを職人さんに理解してもらうのは、東京から会社に戻って10年くらい掛かりました。
重久 職人さんからすると「これは俺の作品だ」という意識が絶対ありますよね。
宇佐美 手作りなのでうまくいかないこともあるんです。当初は「作り直してください」とお願いしていましたが、最近は黙っています。職人さんたちも感じるところがあるようで、勝手に作り直してくださいますね。
三反田 深いですね。普段は、なかなかこういうことを話す機会がないんじゃないですか。
重久 「自分たちはこんなにこだわっています」ということは、あまり表立って言えないところは確かにありますよね。嫌みに聞こえてしまいそうなので。「誰か言ってくれよ」と思います(笑)。
三反田 職人さんは、そう思っているんじゃないですか。
重久 職人さんは、こだわりが当たり前なので、言われる方が不思議らしいです。
三反田 例えば、飴や黒酢の技術、歴史を勉強して、自分たちの国でやりたいという海外の人たちはいないですか。