サテライトシンポジウムは成功を収め、資料を求めて展示ブースに立ち寄り代理店の話を聞く医師の多さにも、それは示されていた。

 世界で認められた日本発の医療機器は、いまだ数少ない。とくに日本で広く臨床応用されている血液浄化療法の領域で、日本発の製品が世界の臨床家に認められ、医療の改善につながっていった例は、これまでなかったといってもいいだろう。そうしたなかにあって、トレミキシンは近年、イタリア、スペイン、ロシアなど欧州諸国で使われ始め、その臨床的評価への認知を確実に高めている。

 とくに血液浄化の分野での世界的オピニオンリーダーであるイタリアのクラウディオ・ロンコ博士のグループから「敗血症治療におけるポリミキシンB固定化繊維カラムの系統的レビュー」(「Critical Care2007;11:R47」掲載)が発信されたことの意義は大きい。

 系統的レビューは、従来の総説や要約と異なり、評価研究を網羅的に見つけ出し、選別し、吟味し、複数の臨床データを統合するメタ解析という統計学的手法のもとで、科学的で客観性のある方法を用いて行われる。「ポリミキシンB固定化繊維カラム」は、トレミキシンの別称であり、ロンコ博士らによる系統的レビューは、世界的に権威ある医学者から治療効果について科学的に信頼できるエビデンス(証拠)が与えられたものとみなされる。

 このように、やがてはロンコ博士につながっていく欧州での人脈も、もとはといえば日本から送ったファックス一本を頼りに、小路が日本での治療効果のデータを携えて単身でブリュッセルの病院を訪れジャン・ルイ・ヴァンサン教授に面談し、飛び込みセールスをするように臨床試験を依頼したことに始まる。

第28回集中治療と救急医療に関する国際シンポジウム会場(ベルギー・ブリュッセル)。世界各国から4500人の医師や医療関係者が集まった。

  ヴァンサン教授は、敗血症治療領域での著名な医学者であり、先のISICEMでもチェアマンを務めるほどの人物だ。同教授の面識を得て臨床試験受諾の返事をもらったことが、後日、欧州の五か国六施設で実施されたトレミキシンのパイロット臨床試験として実を結ぶことになる。

 点と点を結んで線とし、線をつないで面を形づくるようにして、欧州でのトレミキシンの臨床適用を広げていった。

 ISICEMでのサテライトシンポジウム開催日は、このような海外における臨床適用の拡大の努力が晴れて日の目を見た「トレミキシン記念日」でもあった。記念日には記念写真がつきものだ。シンポジウムで講師を務めたドクターたちとともに撮った記念写真が、46ページに掲載の写真だ。