開発というのは、ただ、商品やサービスをつくるだけではない。売り方や商品の使い方の提案など、むしろ、つくった後の事業化を考えることが大事なのだ。時に、商品やサービスを売らないほうが立派な事業になることもある。
私は、このことを「いいものは売るな」と言っている。せっかくつくったのに売るなとは何事か、そう言われる方も多いだろうが、あえて売らないようにしている事業は、よく見ると、案外、多いのだ。
例えば、レンタカーという事業がある。レンタカーとは、自動車を時間や日割り、あるいは中・長期的に貸し出す事業のことだが、我が国にはおよそ50万台ものレンタカーが稼働しており、ユーザーはその手軽さや利便性に、おおむね満足しているようだ。
何より、自分の所有物ではないので、たとえ傷を付けてしまったり事故ったりしても、保険で済ませればそれでよし。もしも自分のクルマなら、ちょい傷でも、まして事故で大きく損傷したら、それこそ心の傷も甚大だ。
要するに、ユーザーは買うことよりも使うことを望んでいるのである。しかも、買わないのだから、購入費用もいらないし取得税を払うことも不要になる。要するに、最初に多額の費用は掛からないのに自由に使える、この点が受けているのだ。