硬い、遅い、補助金頼みという、これまでのイメージを覆す特色ある自治体を紹介するコラム。今回は徳島県神山町を取り上げる。中山間地にあり、有名な観光スポットがあるわけでもない。それなのに若者やクリエイターが集まってくるわけとは何か。その秘密を探る。(リアル開発会議)

 都市への一極集中が進む中、人口流出や超高齢化に直面している日本のローカルをどのように持続・発展させていくのか。その中で、ひときわ注目を集めているのが徳島県神山町だ。

 吉野川の支流、鮎喰川に開けた小さな町で、町の面積の大半を山と森に囲まれている。人口は6000人超。高齢化率も46%と極めて高く、日本生産性本部の日本創成会議・人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)による「消滅自治体リスト」でもその名が上位で上がるなど、少子化と高齢化に苦しむ中山間地の典型と言える存在だ。

 ところが、ここ数年、神山は移住者の増加に沸いている。

 この5年で67世帯、113人が神山町に移住した。若者世代の移住が多く、、30代までが約8割を占める。移住者の増加に伴って、店舗や施設のオープンも相次ぎ、ここ数年を見ても、パン屋やカフェ、歯医者、ビストロ、図書館などが神山に誕生した。この1~2年の動きは特に激しく、神山を訪れるたびに新しい店舗や施設ができている。

 神山には、全国的に有名な観光スポットがあるわけではない。全国を見れば、神山よりも美しいところはいくらでもある。それでも、引き寄せられるように若者やクリエイターなどが神山に集まっていく。