長岐 はい。
瀬川 絶対そういうタイプだよね。そういう部分は、僕は全くダメなの。もう会社内のパワーバランスについてはすごく鈍い。 長岐さんはそういうところがすごい。センシティブでよく把握・分析するよね。「当時はしてた」って言った方がいいのかな。最近は、変わっているように見えますけど。
長岐 会社のボスに言われたことがあるんですよ。「会社は巨大タンカーである。重い、遅い。それを簡単に右から左にポンと動かすことはできない。だから、水先案内人となる先導役の船がいる」と。水先案内人の船は3隻くらい必要なんだそうです。次の目的地に向かって、「右だー」などという人ですね。「先導船は、モーターボートのように速くないといけないんだ」と。
瀬川 あぁ。長岐さんは先導役のモーターボートだったということね。
長岐 そうそう。
瀬川 それ、いいじゃん。で、先導役としては、先頭のモーターボートだという意識を持ってたの?
長岐 持ってましたよ。
瀬川 大きなタンカーを動かそうという気持ちもあって。
長岐 あって。
瀬川 で、やったと。
長岐 予算もついて、頑張りました。一番重要なのは、経営トップがそれをやらせてくれたということでしたね。多少は信頼もあったんでしょう。
瀬川 会社って、やっぱり本当に「経営トップが、どういう意向でやってるか」ということが一番大きいよね。でも、日本の企業の場合、それをあまり明確に意識してないトップもよくいるじゃない。だからそこでさ、先導役の右腕とか参謀とか呼ばれるようなタイプが必要なんだろうね。トップの人が考えてることを、むしろ自分で考えてると思いながらも磨いて明確にしていくっていう役割だから。僕もわりとそういうことやってたから分かるな。
長岐 だから、違う人生を歩もうというときにほかの会社に転職ということはイメージできなかった。自分でやってみようと。
瀬川 それは、僕も同じ。これまでと同様のサラリーマンとして、別の会社で働くことを全然イメージできなくて。僕は、リコーが好きだったからね。
長岐 すごく愛してたから。
瀬川 嫌いで辞めたわけじゃないんですよ。で、あの会社よりもほかの会社に行った方がいいなんてことは、あまりないかなっていう。これは聞いていいのかな。長岐さんは、なぜセイコーエプソンに入ったの。