早いもので、本コラムを担当させて頂くようになってから1年が経った。明るい話題が少なく、何かと問題点が目に付く日本の半導体業界の話題を中心に、言いたいことを言わせてもらってきた。それでも、業界を何とかして元気付けようというのが趣旨であることをご理解いただきたい。本年も引き続きご愛読いただければ幸いである。

 筆者は半導体業界に関わっていた期間が長い。そのため、昨年はどうしても半導体関連のテーマを中心にすることが多かった。今年はそれにこだわることなく、なるべく広い範囲にわたってさまざまなテーマに挑んでみたい。

 年初ということもあり、2015年はどんな年になるのか、どんな市場に期待が集まるのか、といった話題が巷では多く取り上げられている。気になるのは、想定外の原油価格下落に誘発されてか、各国の金利引き下げや景気低迷の懸念といったネガティブなニュースが多い点だ。

 IHSでは2015年の電子機器市場を前年比4.4%成長、半導体市場を同5.9%成長と比較的無難な予測をしているものの、こうしたレベルの成長すら危ぶまれる状況にある。マクロ経済の現状から考えると、少なくとも予測を上方修正するようなポジティブな材料は見当たらない。今年最初のコラムなので景気付けに強気な話題を提供したかったが、難しそうだ。

 ただし、見通しが悪くても、いやむしろ見通しが悪い時にこそ、自社がやるべきこと、こだわるべきことに集中して、組織としての意思統一を図るべきだと筆者は考える。市況低迷が業績に悪影響を及ぼし始めると、組織内のさまざまな問題が目立つようになり、不協和音が増幅しやすくなる。いわく「開発部門は顧客ニーズを分かっていない」「営業部門は顧客の言いなりだ」「経営陣の方針が不明確だ」などなど。問題点の指摘も必要ではあるが、今何をすべきかという意思を統一することの方がはるかに重要であり、これが組織力の強化につながる。