21世紀前半のものづくりの潮流が見えてきた。昨今話題の商品を見ると、自動運転車、FCV(燃料電池車)、3Dプリンター、ウェアラブルIT、ドローン(無人飛行機)、ヒト型ロボットが挙げられる。いずれの商品もITを共通の、しかも重要な技術要素としている。

 20世紀後半に起こったIT革命は、ネットワーク革命となって21世紀の扉を開けた。さらに、この数年はネットワーク革命からIoT革命へと進化しつつある。しかし、どんなにITを駆使し、技術的に優れた商品を造っても、顧客の支持を得られなければ、革命の波に乗ることはできない。

 ものづくりイノベーターとは、このような波の先頭に立つ者だけではなく、この波に乗り、より良い社会づくりに貢献するビジネスにおいて成功する者を指す。筆者は、ものづくりイノベーターの人材像として、次の4つを挙げている。

1.“ものづくり”と“ビジネスモデル”を同時に考える

 ものづくりの意味が変わったことを思い知らされたのが、最近の米Google社の動きである。共同創業者のSergey Brin氏が率いる研究所であるGoogle Xが、これまでウェアラブルITを先導してきた「Google Glass」に関して消費者向けの販売を中止したことだ。

 その理由は、眼鏡型ITの持つ撮影機能によるプライバシー侵害の恐れと、それによって社会に与える負のインパクトの大きさである。今後、Google Glassは、個人市場ではなく、企業や病院などの特定ニーズの市場に活躍の場を求めるものと思われる。せっかく開発した商品が、ビジネスモデルを構築できず狙った市場に受け入れられない結果に終われば、開発者の自己満足で終わり、会社の利益に貢献することはできない。

 米Apple社は、Apple Storeという流通ルートと個人市場を結び付けるというビジネスモデルの構築と、スマホやタブレット商品のものづくりを、同時に考えて成功した。Google Glassは技術思考に偏重したがために、個人市場をベースにしたビジネスモデルを構築できなかったと言えよう。飛ぶ鳥を落とす勢いのGoogle社は、新しい教訓を得たのではないだろうか。