「日本の電子産業の活力は何で測ればよいのか」と題したSCR大喜利。現在の日本の電子産業の活力は本当のところどうなのか、読み解くためのアイデアを聞いている。今回の回答者は、微細加工研究所の湯之上隆氏である。
微細加工研究所 所長
【質問1の回答】研究開発力と収益力が高い場合、“活力”が高い
研究開発が活発に行われ、次々と新技術や新製品が生み出され、それが売り上げにつながり、高い収益を上げ、その収益から次への研究開発投資がなされる。こうした正のスパイラルを生んでいる状態が、活力の高い状態であると考える。
ここで、研究開発力と収益力の2つの条件が同時に満たされることが重要である。研究開発は盛んだが、収益が低いというのでは駄目だ。
例えば、日本は、半導体の地域別シェアの低下が顕著になった1990年代半ば以降に、呆れるほど多くのコンソーシアムや国家プロジェクトを立ち上げた(図1)。まさに国を挙げて半導体の研究開発に邁進したわけである。ところが、シェアの低下を食い止めることはできなかった。
この理由は次のように考えられる。研究開発によって生み出されるものは技術であるが、それは一種の知識であり、情報である。しかし、技術が開発され知識と情報が創出された段階では、何も付加価値を生んでいない。その技術を売り上げに結びつけ、収益に変換する装置(仕組み)が必要である。しかし、日本にはその装置(仕組み)が欠落していた。だから、いくら多数のコンソーシアムや国家プロジェクトを立ち上げて技術開発を行っても、それが企業の売上に結びつかず、その結果、収益も低かった。
ただし、ここで本質的に重要なのは、収益であって売り上げの規模やシェアではない。例え売り上げやシェアが大きくても、収益が低ければ、企業が存続し続けることができないからだ。例えば、図2は2013年の企業別の半導体売上高と営業利益率をプロットしたものである。ここから、売上高と営業利益率には相関関係が無いことが分かる。アナログやFPGAメーカーの中には、売上規模が小さくても、極めて高い営業利益率を上げている企業がある。