「日本の電子産業の活力は何で測ればよいのか」と題した今回のSCR大喜利。現在の日本の電子産業の活力は本当のところどうなのか、読み解くためのアイデアを考えていただいた。今回の回答者は、某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】現在の日本の電子産業の“活力”を海外の国や地域と比較する場合、“活力”をどのように定義しますか?
【回答】即応できる力を“活力”と定義したい

【質問2】日本の現在の“活力”を測るための指標として、どのような統計値、予測値に着目しますか?
【回答】会社の数、メディアの数

【質問3】現在の日本の電子産業の“活力”は、過去の日本や海外の国や地域に比べてどのような状況にあるのでしょうか?
【回答】異分野の人が交わるスクランブル交差点がない

【質問1の回答】即応できる力を“活力”と定義したい

 iPhone誕生から8年。結果として日本はスマートフォンに適応する第一段階で「足踏み」をしてしまったことが記憶に新しい。スマートフォンは本当に来るのか?という内容の議論があちこちで当時行われた。本当にそうした市場が出来たときには遅い。議論だけで、検討だけで時間が過ぎてしまった。一方で「儲かりそう」だと思えばすぐに動き出す海外のメーカーは多い。

 現在、ウエアラブル、IoT、自動運転、スマートホームなど次世代の話はたくさん興っている。そしてやはりここでも、日本メーカーは総じて第1ラウンドは出遅れている。慎重なことは正しいが、慎重過ぎることで結局ほとんどシェアを取ることが出来ずに終わってしまうかもしれない。

 活力という言葉には、「活性化」「活動」などのポジティブの意味が多い。スマートフォンと言えばネコも杓子もという状態で、中国、アジアを中心に地場メーカーが続々と生まれている。Qualcomm社やMediaTek社のチップセットを使えば、「豆腐屋でもスマートフォンを作れる」と言われて久しいが、日本にそのような地場メーカーが生まれていないことが問題だと認識している。

 気象の変化と同じで、「上昇気流」が起こる条件がそろっていれば、必ず上昇気流は吹き始める。にも拘わらず、上昇気流の起こる場所にいなかったら、それに乗ることはできない。上昇気流の気配が感じられたら、その気流に乗る準備を始め、そして実際に乗ること、即応できる力を“活力”と定義したい。