既存事業を堅実に回している人と、新規事業を一から生み出そうとしている人が、同じ指標で評価されるのはおかしい。『デザインマネジメント』でたくさんの企業を救ってきた田子學、田子裕子、橋口寛の3氏はそう指摘する。従来のシステムが、いろいろなところで限界に来ているのだ。

 現代の会社が抱えているさまざまな矛盾を、若者は肌感覚で理解している。その若者を受け入れられるだけの度量が会社にあるのか、今こそ試されている。(聞き手は、高野 敦=リアル開発会議)

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田子裕子氏
たご・ひろこ●エムテド取締役。オフィス家具メーカーにて次世代オフィス研究に携わった後、大学研究室に在籍し、フリーランス活動を開始。現在は育児と仕事を両立しながら、生活者としての鋭い意見によってコンセプトメークする役割を担う。女子美術大学デザイン・工芸学科非常勤講師。(写真:栗原克己)

田子裕子:私は美大(女子美術大学デザイン・工芸学科)で授業を持っているのですが、そこで学生から面白い話を聞きました。

 その学生が高校生の頃に進路について先生に相談したときのことです。彼女は、「1つの分野に絞るのではなく、いろいろなことをやりたい」と希望を伝えたのですが、先生からは「この世界は職種が専門的にカテゴライズされているので、すべてをやるのは難しい」と言われたのです。それで仕方なくグラフィックデザインなどを扱うコースを選択したのですが、入学して早々に私の授業を取ったところ、私が「全部やります」と言ったので、すごい衝撃を受けたそうです。

 彼女いわく、「いろいろなことをやりたい」ということを初めて理解してもらえたらしく、そこでデザインマネジメントにも興味を持ったようです。