思い切ってアイデアを出しても、それを上司に否定されたり、バカにされたりしたら、誰だって意見を言わなくなるに決まっている。『デザインマネジメント』でたくさんの企業を救ってきた田子學、田子裕子、橋口寛の3氏はそう指摘する。

 でも、本当は上司だって突拍子もないアイデアを待っているのだ。だけど、「組織の論理」がそれを許さない。この問題を掘り下げていくと、人事評価制度に対する疑問に行き当たった。(聞き手は、高野 敦=リアル開発会議)

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橋口寛氏
はしぐち・ひろし●ユーフォリア代表取締役。米ダートマス大学タックススクールMBA。メルセデス・ベンツ日本、アクセンチュア戦略グループを経て独立。ハンズオンでのマネジメントに従事し、鳴海製陶取締役を経て現職。新規事業創出などのコンサルティングを行う。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科非常勤講師。(写真:栗原克己)

橋口:手帳の話(第2回参照)を聞いて思い出したのは、心理学の「学習性無力感」です。やってみたけどダメだったという経験を何度も繰り返すと、そのストレスから逃れるために、そもそもやろうとしなくなります。いくら提案してもまともに相手にしてもらえない環境では、「提案しない方が痛い目を見ずに済む」と学習するわけです。

田子裕子:確かに、一人ひとりはすごく面白いことを考えていても、あらたまった場ではなかなかアイデアが出てこないものです。個別に話を聞くと、「面白いから、やりましょう」とアイデアが膨らんでいくのですが、組織としてやると決まったとたん、話が進まなくなってしまうのです。