あけましておめでとうございます。2015年も日経エレクトロニクスをよろしくお願い申し上げます。今年、本誌は創刊以来最大の転機を迎えます。昨年末に発送した2015年1月5日号をもって隔週での発行を終え、来る1月20日に刊行する2015年2月号から月刊誌に生まれ変わります。

 発行形態を変えた理由の1つは、電子産業の変化にあります。現在、世界の電子産業は大きな変革期にあると我々は見ています。それに応じた情報提供の在り方を考えた結果の1つが、紙の雑誌の月間化でした。

 今、業界が進みつつある方向を端的に表す単語がIoT(Internet of Things)です。この言葉を盛んに聞くようになったのはこの一年ほどですが、同様な発想はずいぶん前からありました。1980年代の「TRONプロジェクト」、1990年代の「ユビキタスコンピューティング」やそこから派生した「拡張現実感(Augmented Reality)」などなど。いずれも根本的なアイデアは、情報通信の世界で培った技術を、現実社会のさまざまな問題解決にも役立てようというものです。

 この構想がなかなか実現しなかったのは、業界全体が別の分野に注力していたからです。本誌が創刊した1971年に米Intel社のマイクロプロセッサー「4004」が登場しました。その後の電子産業の歩みを一言で表すとすれば、Bill Gates氏が1990年に語った「Information at your fingertips(あなたの指先にも情報を)」に行き着くのではないでしょうか。

 この言葉が示したのは、世界中のあらゆる情報に思いのままにアクセスできる環境の実現です。マイクロプロセッサーがやがてパソコンを産み、インターネットの発達や携帯電話、デジタル家電の進化と続いた業界の変遷は、今振り返ればこの理想に向かって一直線に進んできたかのようです。スマートフォンがあまねく行き渡った今、目標はほぼ達成できたと言っていいでしょう。

 その次に来る大きな波がIoTと言えそうです。情報を自由に扱える環境を作り上げるのに何十年もかかったのと同様、ひょっとするとそれ以上に長い時間を要する変化が始まろうとしています。そう考える理由は、相手が現実世界だからです。すべてを0と1に還元できた情報の世界と異なり、現実世界の多様性を相手に、思いのままに御していく環境を作り上げるのは、かなりの難事業になるでしょう。