まさか、こんなところにまで――。IDなどの情報を無線通信で配信する「ビーコン」の勢いが止まりません。店舗や野球場などの商業施設だけでなく、家電製品や浄水器、杭、バス、横断歩道など、生活のあらゆる場面にビーコンが浸透し始めました。IDをスマートフォンで受信すれば、インターネットを介してサーバーから必要な情報を入手できるという仕組みです。

 ビーコン普及のキッカケになったのは、米Apple社のOS「iOS7」に「Bluetooth Smart」を使うビーコン機能「iBeacon」が標準搭載されたことです。スマートフォン「iPhone」ですぐに使えるということで、一気に注目を集めました。Bluetooth Smartを使うビーコン信号の発信機は、1000円以下と安価です。しかも電池駆動が可能なため、設置場所での電源確保が不要で、設置の手間が省けます。

 iPhone標準対応で、安くて、手間いらずとなれば、使わない手はありません。一見、ビーコンと関係がなさそうな業界でも、ビーコン活用の検討が進んでいます。実際に、別のテーマの取材で訪れた企業に、「うちもビーコンやってるよ」と言われたことが何度もありました(日経エレクトロニクス2015年1月5日号の特集記事「ビーコンでお手軽IoT」参照)。

 Bluetooth Smartを使うビーコンが大流行の兆しを見せていることから、超音波や可視光といった他の無線通信方式を使うビーコンでは、Bluetooth Smartビーコンとの共存の道を模索する動きもあります。Bluetooth Smartビーコンで広い範囲に情報を配信しながら、ユーザーが対象物に近づいた段階で超音波や可視光などで詳細な情報を配信することを狙います。

 果たして共存関係は成立するのでしょうか。特集の取材でBluetooth Smartビーコンの勢いを目のあたりにしたこともあり、Bluetooth Smartビーコンが進化しながら、このまま単独で勢力範囲を拡大し続けるのではないかと感じました。2015年は、Bluetooth Smartビーコンの新たな用途の登場や、他の無線通信方式の動向に注目です。