(承前)
2000年1月10日付でマツダの休職社員になった私は、捲土重来(けんどちょうらい)のゴールビジョンとシナリオ(第13回参照)に沿って、その1歩目として「経営の全体像を学ぶために中小企業診断士の資格を取得する」ために自宅で受験勉強を開始した。これは2歩目の「長年研究してきたトヨタ自動車の経営に関する本を書く」ための準備である。
産業や企業の栄枯盛衰が激しい現代は、技術者にとっても先が読めない時代だ。いずれは身に付けた知恵やノウハウを基に独立し、本を書いてみたいと考える読者のために、今回は私が中小企業診断士の資格を取得して独立し、本を出版した経緯について述べる。
「技術者なのに財務分析ができるのか」
以前、中小企業診断士の資格を持つマツダの技術者がマツダの経営・財務を分析した資料で、開発管理会議で報告したとき、出席者はポカンとしていた。私も中身はほとんど分からなかったが、「技術者なのに、しかも中小企業の診断士が、大企業の財務分析もできるのか」と驚き、勉強をしたことがあった。その時に分かったのは、中小企業診断士とは、大企業も中小企業も関係なく、経営に関する基本的な知識を網羅的・体系的に習得し、追加的に中小企業支援の知識も身に付ける資格であるということだった。つまり、「中小」は余分で、純粋な「企業診断士」だ。
経営知識を身に付けるなら経営学修士(MBA)もあるが、MBAに入学する時間的な余裕はない。やはりその後の生活を考えたら資格を持っておきたかったので、1年で取得できる可能性があり、MBAに匹敵する中小企業診断士資格への挑戦は、私にとって最適の手段であった*1。