三反田 東京五輪もあるので、これまで以上に多くの外国人が日本を訪れます。従来のパターンとは違う形のストレスが当然出てくると思うのです。単に言葉が通じないだけでも相当ストレスがありますよね。こんな僕ですら、海外に行くと無口になっちゃいますから。広い業界が、その課題を抱えていると思います。

 柳瀬さんは、今後どんなことをやっていくのですか。

柳瀬 実は、供養の業界がなくなってしまうことだってあると思っているんです。未来永劫、続くとは限らない。

 例えば、前職のブライダル業界では「仲人」という仕組みが昔はありましたよね。でも、今は急減しているんです。これは、9割が8割になり、7割になり…と、徐々に減ってきたわけではありません。10年ほど前から、急速に減ってしまいました。これは、「今どき仲人なんてたてないよね?」とか「え?おまえ仲人たてるの?今どき?」というような潮流が起きたことで、古き良き文化が合理化の波に一気に飲み込まれた事例です。

 このように、日本人としての文化や価値観のようなものは、あるとき一瞬にしてなくなってしまうことがあるわけです。これが供養の業界で起きないとも限らない。先祖に手を合わせて祀ることが、あるときに突然「おまえ、そんなことしているの?」と。先人がよかれと思って築いてきた文化や価値観がいきなりなくなってしまってもおかしくない。それが今の世の中だと思っています。

 仲人をお願いしなくなった理由は、「面倒くさい」「費用がかかる」「誰に頼んでいいのか分からない」などいろいろとあるでしょう。それは、墓参りのために地元に帰らない人々の理由と似ています。だから、何か手を打たなければなりません。

(写真:加藤 康)
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リアル 確かに最近、「お墓に入りたくない」という人も増えていますね。子供たちに迷惑を掛けないように「散骨してほしい」とか。

柳瀬 そうなんです。供養のサービスをしていて最も多い相談事項は、「お金もある。あるていどのことはできるけれど、息子や娘に迷惑をかけない一番いい方法は何か」というものです。その結果として、宇宙葬とか、樹木葬とか、散骨海洋葬とか、いろいろありますよね。

 今、国内では年間に25万基の新しいお墓が建てられています。でも、これから新しく設けるお墓は多様性があっていいと思うんです。墓石屋の息子ではありますが、別に墓は石でなくてもいいし、世の中の実態に即した形で構わないのではないでしょうか。

 実は、業界にとってはさらに重要なことがあります。既に国内には現状で2800万基のお墓があります。年間に建つお墓の100倍以上が存在しているのです。それは、生かされている人々がメンテナンスしていかなければなりません。そうした全体像を考えながら、腰を据え腹をくくって「お墓問題」に取り組もうとした人々は、供養の業界にはいなかったように思います。商売としての側面だけではなく、社会的意義や供養における概念を意識し続けることが、先祖に手を合わせ思いを馳せる文化を未来につなげていく役割を果たすと思うんです。そういうビジネスにしていきたいですね。