自動車用、医療機器用といった高度な安全性が求められる応用でのリコールリスクという、半導体業界にとっての新しい課題について考えるSCR大喜利。今回の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
三ツ谷翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】技術にかかわる部分、事業体制にかかわる部分で、半導体メーカーがリコールリスクに備えて見直すべき点はどこか?
【回答】顧客協創型の開発プロセスの導入・強化

【質問2】顧客との関係の側面で、リコールリスクに備えて見直すべき点はどこか?
【回答】硬直しがちな開発プロセスの柔軟化(アジャイル化)

【質問3】リコールリスクを、むしろ半導体メーカーの商機にした製品・サービスはできないか?
【回答】分散端末側からのトラブルトレーサビリティ提供

【質問1の回答】顧客協創型の開発プロセスの導入・強化

 エレクトロニクス領域の拡大・高度化に伴い、半導体のアプリケーション市場は広がりを見せている。この広がりをリコールリスクといった観点から捉えてみる。例えば、医療・産業分野のように従来エレクトロニクスの活用度合が低かった領域(ひいては新しい半導体ユーザー)や、IoTやウエアラブルのような領域では、半導体ユーザー自身がアプリケーション開発をトライ&エラーしながら進めることが多い。これら領域では、ユーザー側による試行錯誤の繰り返しが増加し、試行する内容も多様化・分散化していく傾向がある。また、スマートインフラに代表されるように、新しいサービスが世に登場するまでに、業界バリューチェーンを横断して、事業・技術の開発を進める必要があるケースが増えた。このため、ユーザー側における、半導体を活用した設計開発業務はより複雑性を増している。

 このような中で、開発の視点からリコールリスクに備えるには、従来以上にユーザーの開発の悩みに寄り添う必要があろう。そして、よりプロアクティブにユーザーの課題、さらにはユーザーが気付いていない仕様条件、潜在リスクに踏み込み、顧客協創型の開発プロセスの導入・強化が重要ではないか。