「インターネットは今、産業・商業分野において企業の在り方を大きく変えつつある」。米General Electric(GE)社でインダストリアル・インターネット関連事業を統括するGE Software社Vice PresidentのBill Ruh氏は2014年11月に開催した説明会でこう強調しました。

 産業機器がインターネットにつながることにより、産業機器メーカーはこれまでにない利便性を顧客企業に提供できるようになります。例えば、定期点検などのアフターサービスは、これまではどの顧客に対しても同じメニューでした。「常に高い負荷をかけて運転している顧客も、それほど負荷が重くない顧客に対しても、一律の期間で点検していたのが従来の手法」(IHI)でした。しかし、オンラインで稼働状況をモニターできれば、「本当に必要な時に点検をするよう、顧客別の計画を立てられる」(同社)ようになります。個々の顧客に合わせたきめ細かなサービスが可能になるわけです。故障の兆候をつかんだら先回りして部品交換や補修をすることで、顧客は予期しない故障に遭遇することがなくなり、故障による損害や復旧のための費用を削減できるようになります。

 インターネットを活用することで、メンテナンスや故障対策から一歩踏み込むサービスも可能になります。例えば、顧客の使い方に合わせて機器の運転方法を微調整し、電力や燃料を節約することです。顧客の事業上の負担を軽くして、事業を進めやすくなる手助けができるようになります。すなわち、従来は産業分野の機械や設備を使うために顧客企業が負担していた工数やコストを、機械や設備のメーカーが肩代わりし始めています。それも従来顧客企業が支払っていたコストよりも安く、顧客ごとの事情に合わせた形で、長期間にわたって、です。

 インターネットがない時代には、産業機器メーカーが顧客にとっての価値を高めるには、機器自体(ハード)の機能と性能を高めるしか実質的に方法がありませんでした。しかし、今は、インターネットによって、継続的に情報やソフトウエア、そしてサービスを提供することにより、ハードが持つ価値を最大限に引き出せるようになりました。機器を提供したら終わりではなく、機器の提供をきっかけにして、顧客が本当に必要としている“こと”を先回りして実現していく時代が始まろうとしています。日経ものづくりは2014年12月号の特集1で、国内外の先行事例を交えながら、こうした「おもてなしものづくり」の最前線をお届けします。担当したのは、木崎編集委員と、2014年10月に日経ビジネス編集から異動してきた山崎デスクです。

 2014年12月号の特集2は、2014年10月末から11月初旬に東京ビッグサイトで開催された「第27回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2014)」の詳報です。会期中の来場者数はのべ16万5000人強と、前回(2012年)を1万人以上も上回りました。日本の工作機械メーカーが出展したさまざまな最新機種の中で、今年、特に注目を集めたのが切削加工に付加造形や摩擦撹拌接合などの機能を加えた「ハイブリッド加工機」です。中山デスクが記事全体を取りまとめました。

 今号でもう1つご紹介したいのが、特集3「バッテリー電車」です。架線を利用せず、2次電池に蓄えた電力で走る鉄道車両“バッテリー電車”が次々と現れつつあります。JR東日本が既に営業運転を始めた他、開発段階では東海、西日本、九州とJR3社がそろって試作車を走らせています。電化区間を電車として走りながら電力を蓄え、その電力で非電化区間まで足を延ばします。電化区間、非電化区間を直通する列車のエネルギーを軽油から電力に変えて節約し、騒音を減らせるバッテリー電車の最新の開発動向を詳しく説明しています。どうぞご期待ください。