どこもかしこもGaN(窒化ガリウム)パワー半導体だ。GaNを使用したパワーデバイスにとって、市場のけん引力はとても重要だ。(2020年に市場を支配するであろう)電源/PFC(力率改善)部門からUPS(無停電電源装置)とモーター駆動まで、複数の応用分野がGaN-on-Siパワーデバイスの特異性による恩恵を受けることになるだろう。

 こういった応用に加え、2020年以降、電気自動車(EV)とハイブリッド自動車(HEV)が、そういった新材料やデバイスを採用し始めるだろうとYole Developpement (以下Yole)は考える。GaNパワーデバイスは現在のシリコン(Si)製品よりも高価だが、システムレベルでのコスト削減効果は大きくなる可能性がある。今後の5年間は、GaNパワーデバイスをシステムレベルで使用した場合の効力を示す上で鍵となる期間になるだろう。Yoleは、この変遷の詳細のすべてに関するレポートを2014年6月に出版した。

2020年のGaNデバイス市場規模は6億米ドルの可能性


 市場規模に関して、全体としては2020年のデバイス市場の規模は、ほぼ6億米ドルになるかもしれない。この場合、6インチのウエハーが約58万枚加工されることになる。EVとHEVが2018年もしくは2019年にGaNを採用し始めるというシナリオに基づけば、数量の増加は2016年から著しく始まり、2020年まで年平均成長率(CAGR)80%で拡大していくだろう。

 最近の発表によれば、GaN業界は、合併や買収、ライセンス契約が決まることによって形作られてきている。古河電気工業の知財ポートフォリオの排他的ライセンス契約に加え、米Transphorm社と富士通による昨今の契約は、GaN技術がバリューチェーン全体に広まってきていることを示す明るい兆しだ。このことは、主要企業の市場における立場を強めるが、最も力のない企業を置き去りにすることにもなりそうだ。そのため、日本企業は今、ドイツInfineon Technologies社/米International Rectifier(IR)社や米Efficient Power Conversion(EPC)社といったパワーデバイス・メーカーと競いながら、この分野に全速力で参入してきている。

 Yoleでは2014年の市場規模について、デバイスの売り上げと研究開発契約などを合わせて妥当なところでは1000万~1200万米ドルにしかならないだろうと予想している。こういった規模の大きくないビジネスにおいては、最も強いものだけが生き残ることができる。そして、早期参入組の中には、キャッシュフローが急速に減っていく企業もあるだろう。

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