ニューロウェアの「mononome」
ニューロウェアの「mononome」
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 草花が踊り、壺が歌い出す――。ディズニーのアニメ映画には、そんな場面がよく出てきます。近い将来、空想にとどまらず、現実世界にやってくるのではないか。そんな感覚を今持っています。

 きっかけは、続けざまに2つの技術に出会ったことです。1つは、フランスAlcatel-Lucent社のBell Laboratories(ベル研)でみた「チャットするモノ」のデモ(関連記事)。このデモは、同研究所が研究中の技術を組み合わせたもので、利用者の周囲にあるモノと、スマートフォンを通じて文字チャットで制御ができるというものです。例えば、照明Aに対して「点いて」「消えて」と文字を送れば、そのように動いてくれます。

 これまでにもTwitterに状態を“つぶやく”家電やチャットができる家電などはありました。それらと違うのは、人の移動に伴って動的にチャットできる相手が変化していくというコンセプトです。例えば、家なら家にある空調や照明、会社のオフィスならプリンターや電話機、会議室ならプロジェクターとチャットできるといった感じです。どこにいっても、そこで会える友達がいるといった感覚を得られます。

 もう1つは、「nekomimi(ネコミミ)」で有名なプロジェクトチーム、ニューロウェアが開発したデバイス、「mononome」です。mononomeは、その名の通り「モノ」に「目」を着けるもの。モノクロ液晶でできた“目”と、振動センサーや照度センサーなどを積んだ装置です。椅子やお菓子箱、コーヒメーカーなど、様々なモノに付けて使います。使い方は自由ですが、例えば、長い間使われていない椅子が悲しそうな目をしたり、1日何回もお菓子箱を開けようとした子供に対して怒ったような目をしたり、することができます。もちろん、モノには“心”はないのですが、“目”を付けるだけで「急に人との距離が近くなる」(ニューロウェアの加賀谷友典氏)といいます。将来は、最近元気がない家主を気遣った椅子が、コーヒーを入れて慰めてくれる、といった世界を実現できる、と考えているそうです。

 これまで人とモノとのコミュニケーションは、人が僕(しもべ)であるエージェントに命令を発し、このエージェントが周囲の機器を制御するという形態を模索してきたように思います。米Apple社がiOSに搭載した「Siri」しかり、ソフトバンクモバイルの「Pepper」しかりです。ただ、そうした世界は、ユーザーとエージェントの2人称であり、なんだか寂しい気がします。個人的には、身の回りの機器に“魂”が宿り、それぞれとコニュニケーションができる世界の方が、すべてのモノに神が宿ると感じる、日本人的感覚に合っている気がします。