図1●ファナックが出展した協調ロボット
図1●ファナックが出展した協調ロボット
[画像のクリックで拡大表示]

 安全柵なしで作業者と領域を共有できる産業用ロボットを実現しようという動きが目立ってきた。例えばファナックは2014年10月末から11月はじめにかけて開催された第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)で、人間が触ったらすぐ止まるなどの安全機能を持たせた協調ロボットのプロトタイプを出展した(図1)。2014年10月中旬に開かれた「Japan Robot Week」でも、作業者との協調動作をテーマにしたロボットを川田工業、グリーネプランニング(デンマークUniversal Robot社)などが展示した(図2)。

図2●Universal Robot社の多関節ロボット「UR5」
図2●Universal Robot社の多関節ロボット
[画像のクリックで拡大表示]

 産業用ロボットは、工場で作業者を傷つけないよう、安全性には特段の配慮が必要である。そこで、日本においては労働安全衛生法と労働安全衛生法施行令を実施するための労働安全衛生規則に、「産業用ロボットの周囲には柵を設ける」といった規定を設けている。これならばロボットが作業者に危害を及ぼすおそれは基本的になくなる。しかし、人とロボットの協調作業は極めて難しくなる。

 日本国内に多い多品種少量生産の工場では、多様な部品やワーク(作業対象)を扱う必要があり、加工や組み立ての方法も部品やワークによって異なる。そのため、完全な自動化は難しく、作業者とロボットが適宜協調して動けるようにした方が柔軟な生産体制を得られる。そもそもロボットのために人が入れないスペースが生じて工程が分断されるのは、見通しのよいラインを造る上では障害になる、という意見も聞かれるようになった。世界的にも、安全技術の進歩などにより、作業者と協調動作可能なロボットを実用化しようという機運が高まっている。

 そこで、作業者と協調するロボットの導入を想定して、労働安全衛生規則の細部の解釈を定めた「施行通達」が2013年12月14日に一部改正された。2014年になって協調ロボットへの動きが目立ってきた背景には、この施行通達の改正がある。