近年メディカル・エレクトロニクスに対する期待は非常に大きいものがあり、多くのメーカーが市場参入を図っています。ただし、その期待は大きく分けて2つに分けられます。最初の期待は、もちろん新しいエレクトロニクス技術により、これまで難しかった治療や予防、健康管理が可能に、あるいは容易になるのではないかというものです。

 もう1つは、成長するメディカル・エレクトロニクス市場で何か新しいビジネスで一儲けできないかというものです。前者は患者や医療従事者の観点に立ったもので、その期待には切実なものがあります。新しい技術が実用化されれば、比較的短時間で採用されます。後者は、これからメディカル市場に入っていこうとしているエレクトロニクス企業の立場です。これまで培ってきた高度な技術を導入すれば、何かできるのではないかという考えなのですが、残念ながらこのようなアプローチはなかなかスムーズにはいかないようです。

 最近の例では、大手エレクトロニクス・メーカーである韓国のサムスン電子やドイツのジーメンスが相次いで、メディカル事業の体制を、あまり前向きでない方向に、大幅に変更することが発表されました。どうも、これまでの民生用エレクトロニクスや産業用エレクトロニクスに比べて、技術面だけでなく、ビジネス面でも、かなり勝手が違っていると感じたのでしょう。