「日経ものづくり」2014年8月号の異種材料接合技術の特集「何でもくっつける」では、いわゆるカコミ記事として3Dプリンターの解説をN副編集長に書いてもらいました。3Dプリンターには、2つ以上の材質で造形する技術があり、異なった材料を組み合わせるという点では接合と同様の結果を得られると考えたためです。異種材料でなくても、そもそも3Dプリンターは層同士の接合が必要になる点で、接合技術とはかなり近い関係にあるといえるでしょう。

図1●「ものづくりパートナーフォーラム2014」でのWELCON社のブース
図1●「ものづくりパートナーフォーラム2014」でのWELCON社のブース
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 2014年11月19~20日に開催した「ものづくりパートナーフォーラム2014」(東京・東京都立産業貿易センター浜松町館)では、拡散接合技術を専門とするメーカーWELCON(本社新潟市)が出展しました。大変恐縮ですが、特集記事ではカバーしそこなっておりました。そこで、あわててお話を伺いにブースを訪ねました(図1)。

 拡散接合は、部材同士を重ねて熱と圧力をかけ、部材間の距離を原子の大きさのレベルにまで近づけることで、結合させる技術。熱と圧力は、原子をある程度運動させることによって、双方の部材の原子同士が結び付くのを促進する手段だそうです。熱といっても部材が溶融するほどの温度にするわけではなく、固体のまま接合する「固相接合」の一種です。接合する前の面は、通常は極めて平滑でないと密着しにくいそうですが、同社は接合装置を自ら手掛けることにより、一般部材程度の平滑度でも接合を可能にしました。

図2●細い穴が多数開いたブロック。熱交換器として使う
図2●細い穴が多数開いたブロック。一辺が250μm(左下)から800μm(右上)の六角形の穴が開いている
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 拡散接合自体は1950年代に発明された古い技術ですが、温度や圧力の制御技術など、関連する技術の精度が向上したこともあり、極めて高精度の部品を造れるようになりました。例えば、細い穴が多数開いたブロック(図2)。エッチングで穴をあけた板を層状に積み上げ、拡散接合で一体化することにより、数十mmの部材を40μm程度の穴が多数貫通したような構造物も造れます。1つひとつの穴は小さくても、数が多いので、内面の表面積は非常に大きい。つまり、極めて小型の熱交換器ができます。「大き目の冷蔵庫ぐらいの大きさの装置が、最良の状態で手のひらサイズくらいになる」(WELCON常務取締役の田岡健氏)そうです。