小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げが目前に迫ってきた。予定は、2014年11月30日。予定通りなら、あと数日で、はやぶさ2は宇宙へと旅立つ。そんなはやぶさ2だが、初代の「はやぶさ」と大きく異なっている点の一つが、インパクター(衝突装置、SCI:Small Carry-on Impactor)という新装備を搭載していることだ(図1)。

図1●インパクター
下面中央から下に付き出した円筒部分に取り付けられているのがインパクター。画像:JAXA
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 同装備は、弾丸を小惑星に衝突させて人工クレーターを形成するためのもの。小惑星の表面の物質だけではなく、内部の物質もリモート観測したり採取したりできるようにする。人工クレーターの形成によって、地下に埋もれていた物質を露出させ、それを観測・採取できるようにするのだ。内部の物質は、宇宙放射線による宇宙風化を受けていないので、より始原的な姿をとどめている可能性があり、地球・海・生命の起源や進化の解明に役立つと期待されている。

 インパクターにはもう一つの重要な役割がある。宇宙衝突実験だ。衝突前後の小惑星表面の変化や小惑星の内部構造の観測により、小惑星の構造をより踏み込んで調べられるようにする。さらに、インパクターによって人工クレーターが形成される様子を分離カメラで記録し、天体衝突科学に役立つデータを採取する。