先日、ダイハツ工業「コペン」の試乗会に参加して最も驚いたのは、樹脂外板によってフードやフェンダーなどを塗装する工程がオフラインになっているということでした。実は、ドアだけは側面衝突の基準に対応するため、鋼板製なのですが、それ以外のボディー外板はすべてオフラインで塗装しているということなのです。

 従来、自動車には電着塗装、中塗り、上塗りという3層の塗装工程が必要でした。したがって、塗装ラインは非常に長く、コペンの場合でも電着塗装だけで200mもあったといいます。しかし、外板を塗装しないでよいのなら、この工程は大幅に短くできます。

 例えば、コペンの場合、ドア以外のボディーは電着塗装だけで終わりです。その電着塗装も、コンベアで車両がゆっくりと動いていく流れ作業ではなく、車両を1台1台20分ほど漬けるバッチ式とすることで、ラインを短縮しています。

 従来、電着塗装は、上に塗る色を考慮して灰色が多かったですが、これも黒色にしました。外板に覆われる以外のところは電着塗装面が見えてしまいますが、黒色で統一することで、外板色に合わせて再び塗り分けるといった手間をなくしたのです。

 もし、ドアさえも樹脂化できれば、自動車の組み立てライン上での塗装ラインは不要になるでしょう。外板は、別工程で塗装したものをねじなどで取り付けるだけで済むので、プラモデルのように組み付けられ、組み立て工程だけでよくなるのです。

 ダイハツの取り組みは、こうした新しい生産方式の挑戦も含んでいます。海外では、ドイツBMW社の「i3」がボディーをアルミニウム合金製骨格とCFRP製ボディーで、樹脂化の取り組みを進めています。樹脂ボディーは接着で組み立てることで溶接作業をなくしています。また、英Gordon Marrey Design社も、「istream」という生産方式を提唱しており、鋼管製骨格に樹脂製外板を組み合わせることで、塗装ラインを不要にできると提唱しています。

 パワートレーンではハイブリッド車や電気自動車で電動化技術が、そして安全技術では自動ブレーキやその延長線上にある自動運転が注目されていますが、前述したような生産における革新も今後のクルマには求められるのではないでしょうか。そうした意味では樹脂を多用したボディーに取り組むダイハツの試みは、生産ラインの大転換の序章とも言える注目すべきものだと思います。