EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が2014年11月20日、台湾高雄にスマートフォン(スマホ)用の中小型液晶パネル工場を建設すると表明した。製造するのはハイエンドのスマホに搭載されることで知られる高解像度の低温ポリシリコン(LTPS)パネル。同社傘下のパネル大手、台湾Innolux社(群創)が高雄サイエンスパークの路竹エリアに擁する第8.5世代(2200×2500mm)と呼ばれるガラス基板を製造する工場に、2社合わせて総額800億~900億新台湾(NT)ドル(1NTドル=約3.8円)を投じ、第6世代(1500×1800mm)工場を設ける他、テレビ用が主力である既存の8.5世代工場の生産能力も拡張する。量産開始は2016年4月を予定しているという。

 LTPSパネルはジャパンディスプレイや韓国LG Display社らが米Apple社のスマホ「iPhone」に供給していることでも知られる。最近では世界市場でも台頭著しい中国系のスマホブランドでもハイエンド製品への搭載が進んでいる。中国や台湾の市場や業界では、フォックスコンが高雄にLTPSパネル工場の設立を決めたのも、iPhoneへの供給を視野に入れてのことだとの見方がもっぱらである。

 フォックスコンがスマホ用の第6世代LTPSパネル工場を建設するという話が最初に出たのは今をさかのぼること約3年前の2012年2月のこと。場所は今回発表された台湾高雄ではなく中国四川省成都市で、同社がApple社から製造を受託するタブレット端末「iPad」の専用工場を2010年に設立した土地である。

 ところが、当初量産開始の時期と言われていた2013年下半期になっても、着工したという発表やうわさすらない。ようやく2014年1月になって、フォックスコンが中断していた建設計画を再開したとの情報が浮上したが、しばらくすると再び話題に上らなくなった。

 それが、2014年10月に入ると動きが慌ただしくなる。まず台湾メディアから、フォックスコンが四川省の計画を取りやめ、Innolux社の高雄工場に設立することに方針を転換したとの報道が盛んに出始めた。すると10月23日には『ウォール・ストリート・ジャーナル中国語版』が消息筋の話として、フォックスコンがiPhone生産の主力工場を置く土地として知られる中国河南省の鄭州市政府とiPhoneなどモバイル端末用のパネル工場を設立することで話を進めていると報じた。投資総額は350億元(約6755億円。1元=約19.3円)で、実現すれば、フォックスコンのハイエンド部品生産関連の直接投資では過去最大規模。2014年8月には鄭州工場を訪れたフォックスコンのトップ、郭台銘董事長が現地の政府高官と会見し、パネル工場設立について話し合いをもった他、翌9月にはパネル事業部のトップが工場建設地の選定を行ったと伝えた。